■今日の一押し P12


▼可憐な本。

カントリー・ダイアリー 『カントリー・ダイアリー』(エディス・ホールデン※ 岸田衿子・前田豊司訳/サンリオ)※イーディス・ホールデンに同じ。

以前御紹介した『ネイチャー・ノート』の1年後の1906年、35歳のエディス・ホールデンさんが描く、英国の田園の四季です。 1906年の1月から12月、季節の花々や小鳥の水彩画に、折々の生活や自然に寄せる思い、お気に入りの詩などが添えられています。 相変わらず美しく、可憐です。 『ネイチャー・ノート』の時にも思いましたが、「1906年の田園風景」という響きだけで、いとおしいような何かを惜しむようなたまらない気持ちになりますね。 「エニシダ」、「イラクサ」、「ニワトコ」など、 植物音痴の私にとっては、本の中だけで出会う妄想の植物(笑)の名前を可憐な絵で確認するのも、図鑑を見るよりずっと楽しく、見飽きない本です。 ナチュラリストにも、空想インドア派にもおすすめ。 →日記つながり


▼あのビリチスに!

バルビエ・コレクション2 ビリチスの歌 『バルビエ・コレクション2 ビリチスの歌』(ジョルジュ・バルビエ 鹿島茂編・解説/リブロポート )

ジョルジュ・バルビエ。20世紀を代表するイラストレーターの一人だそうですが、知らなくても問題ナシです。素晴らしさは一目瞭然だもんね。 そして本書は、彼の作品の中でも最高傑作の「『ビリチスの歌』の挿絵」を収録しています。おぉ、『ビリチスの歌』かぁ! それはまた、愛書家にとっては見逃せない名前です。 『ビリチスの歌』は、「ギリシャ語原典からの翻訳」という形で出版された、ピエール・ルイスの創作です。それらしい参考文献目録まで付いていて、ニヤリとさせられます。架空の詩人の架空の詩集。しかもエロティック。日本でも魅了された人々は多く、いろんな「ビリチスの歌」本が出ていますよ。(ビリティスの歌等の表記の違いアリ 。ウチでも在庫してました。→これ→これも) あの読書界(?)の人気者『ビリチスの歌』に、バルビエの挿絵だって!

しかし、バルビエの原画を写真製版やポショワール(ステンシル)よりも美しく再現した木版画家シュミットの木版画挿絵が付いた限定125部の『ビリチスの歌』(1922年刊)はコレクターに秘蔵されてこれまで世に出てこなかった、本書は世界でも初紹介、と解説の鹿島茂さんが言ってます。コラール版『ビリチスの歌』に収録されたバルビエの挿絵は、小さなヴィニェット(装飾模様)を除いて、45枚すべてを収めた。と、解説の鹿島茂さんが自慢してます(笑)。 鹿島茂さんの解説が非常に分かりやすいです。さすがに生き生きしてる。好きで好きでたまらないんだろうなぁ。 じっとり見て楽しみたい本。 (詩は全部収録されていません。挿絵部分のみ収録。挿絵についた詩と序文については、鹿島茂さんによる要約が付されています。)

原典の情報を書いておきます。
ピエール・ルイス『ビリチスの歌』
挿絵原画:ジョルジュ・バルビエ
木版:フランソワ=ルイ・シュミット
コレクション・ピエール・コラール
パリ 1922年


▼何度でも不気味。

狂人の太鼓 『狂人の太鼓』(リンド・ウォード/国書刊行会)

「奴隷商人の父親がアフリカから持ち帰った太鼓は、一家に何をもたらしたのか。父の教えを守り、書物に埋もれた学究生活を続ける男とその家族を次々に見舞う恐るべき死と災厄。グロテスクな想像力にあふれた120枚の木版画で語られるこの「小説」には、文字が一切存在しない。読者は絵を1枚ずつ丹念に読み解くことによって、“知”に憑かれた主人公に下された過酷な運命を、ひとつひとつ辿っていくことになる。強烈な明暗対比と鋭い描線で読書界に衝撃を与えた特異な天才画家ウォードの“文字のない小説”」(カバーそで紹介文より)

奴隷商人の父がアフリカから持ち帰った太鼓、 ということで、その時点ですでに禍禍しい雰囲気に満ちています。 要するに「呪われた太鼓の物語」と申せましょうか。 ──と言うだけで、「あ、だいたいわかった」と思うすれっからしの本好きは多いはず。 でも、文字が一切なく、木版画で見る「呪われた話」は、想像以上に不気味な気持ちになれます。 しかも何度でも。 細部にも暗示的な描写があり、読み返すと、新たな発見にドキンとすることもあります。 まだまだ見逃している、ぞっとするような何かがあるのではないかと、何度見てもどきどきする本です。
→楽器つながり


▼いちいち面白い。

あのひの音だよおばあちゃん 『あのひの音だよおばあちゃん フレーベル幼年どうわ文庫20(絵本)』(佐野洋子:作・絵/フレーベル館)

佐野洋子さんは、いったいどれだけ傑作を残せば気が済むのでしょうか。すごいなぁ。 もちろん一番の大傑作は、『100万回生きた猫』だと思いますが、あれが「号泣絵本」なのに対して、本書は「おかしくておかしくて、ちょっとだけホロっとする」絵本だと思います。
いちいち笑えるんです。ページをめくる度に面白い展開があるし、後で思い出して想像するとまたおかしい。 猫とおばあさんが二人で暮らしている家。雪の晩。何もすることがなくて、猫はおばあさんにお話をせがみます。猫がこの家の猫になった日の話を。 おばあさんによると、それも雪の日で、大きな黒い豚が自転車に乗ってやってきたんだって。カッチャンコ、ギッチンコ。豚が。自転車で。なんで?と思うとおかしいし、絵も愉快。それから、豚に「猫をもらってくれ」と言われて「猫は嫌いです」と言った、というくだりで、聞いていた猫が泣きそうになるのも面白い。全体に猫とおばあさんの会話がたくさんあり、それがとても微笑ましいのです。 ちょうどそこへ、あの日と同じ自転車の音をさせて豚がやってきます。今度の猫は「特別な猫」だそうで…(今いる猫は普通の猫なんですけど)。 久しぶりに何度も絵本を読みました。ぜひ、お子様に読んであげてほしい傑作です。
→猫つながり
→ブタつながり
→自転車つながり


▼ワクワクするよ!

一角獣の秘密 『一角獣の秘密』(ルネ・ギヨ 塚原亮一訳 鈴木琢磨挿絵/学研)

評判は聞いていましたが、すごく稀少で、最近になってようやく読めました。ふぅ…(満足) 多分、男の子なら全編ワクワクし通しで、女の子なら前半が特にワクワクするんじゃないかなー。 リュウ伯爵家につかえる狩猟長の息子リュカは、やがて城に召し抱えられ、老伯爵のお世話と、伯爵家の後取り息子リュックの狩猟のお供をするようになります。リュックはリュカに信頼を寄せてくれるし、リュックの双子の妹マリ=アンジュは美少女で、リュカの憧れだし、日々は充実しています。 しかし、伯爵家には何か秘密があるようだ、という気配は初めから濃厚に漂っています。チラチラと見せたり隠したりする著者の手綱さばきが巧妙なんです。 ん~、言いたいけど、黙っておこう。そこが肝だし! 後半は、主にリュカの海洋冒険物語になります。男子好みかな。

児童文学ではありますが、年老いても猟と海への情熱を滾らせる血気盛んな老伯爵や、気味が悪いけど忠実な執事ボワギニエ、耳飾りをした不思議な大イノシシ、悪人だけど凄腕の船長モルドオなど、脇を固める人物像がとても魅力的。陰影と深みがあるのです。 ただ最後まで読んでも謎の箇所が残ってます。それで余計忘れられなくなるのかも。 どうでしょう? ワクワク感が伝わりますか?
→ミニ特集・少年少女新しい世界の文学


▼ともかく「買い」で。

ForLadies 思い出復刻版 『ひとりぼっちのあなたに・さよならの城・はだしの恋唄 ForLadies 思い出復刻版』(寺山修司:文 宇野亜喜良:画/新書館)※画像は箱

新書館のフォアレディースシリーズの「ひとりぼっちのあなたに」「さよならの城」「はだしの恋唄」の復刻版です。3冊セットで函入。

寺山修司の詩、散文に宇野亜喜良の装丁、挿絵も美麗で、どうしても持ちたいと思わせる魅力充分なのに、長く古本で探すしかなかった本です。復刻は意義があると思います。持っていない方はこの際サクッと復刻で揃えちゃうのもアリでしょう。雰囲気を味わうのにも良いですし、とりあえず買っておいて損はない本です。すでに元版を持っている方は…そうねぇ、箱が付いてますよ(笑)? 状態も良好ですから保存用にもプレゼントにも。この3冊が、1つの箱に入っています。


▼切なさMAX。

あなたの人生の物語 『あなたの人生の物語 ハヤカワ文庫SF』(テッド・チャン 浅倉久志他訳/早川書房)

テッド・チャンのSF短篇集。8篇を収録。そのうち、1番イイのはやっぱり表題作だと思います。イイ! 切ない! この話を説明しようとすると、やっぱりちょっとしたサイエンスの話が必要になります。私には、そのサイエンスが理解できてるわけではありません。でもわかる。わかるところが大事で、わかるところがミソなんです。

言語学者のルイーズは、地球を訪れたエイリアンとコミュニケーションをとるために招かれます。え~、いろいろありますが、端的に言っちゃいますよ。地球の言語は逐次的で、会話も当然、時の流れにのって「先へ進む」でしょ? A→B→Cです。が、このエイリアンは話し出した時点で相手が何を言うかも分かってる。会話がどのような結論に達するか、分かっていて会話する、そういう思考法を持っている、ということが、ルイーズには次第に理解できるようになってきます。そして彼らの言語を学ぶうち、彼らのように思考できるようになります。 小説は、あたかもルイーズが体感するようになった世界を表現するかのように、まだ生まれてもいないルイーズの娘が反抗期だった頃のエピソード、3歳の頃のエピソード、そして、娘が25歳で事故死した時のエピソード等を行ったり来たりし、娘への思いを散りばめるように進行するのです。「これがあなたの人生の物語」だと、語りかけるように。 理論はおぼろげでも、この小説は理解できます。私たちは未来を予見することはできないけれど、うまく行かないとわかっていて誰かを好きになったり、愛する者といつか死に別れると知っていても愛することをやめられなかったりするような人生の切なさなら、普通に知っていて、そこから想像を広げるからだと思います。いかがでしょう?


▼少女がモミの木。

モミの木 『モミの木 ワンス・アポンナ・タイム・シリーズ』(アンデルセン 小杉佐恵子:訳 マルセル・イムサンド、リタ・マーシャル:写真・構成/西村書店)

今年はクリスマスらしい特集を何もできないので、せめてクリスマス一押しを。

以前、紹介した写真の赤ずきんちゃんと同じワンス・アポンナ・タイムシリーズです。(挿絵に凝った大人向け童話シリーズですが、数冊、写真絵本が入っているようです) アンデルセンの童話「モミの木」、ご存知でしょうか? わたし、こんなに悲しい話だとは、存じませんでしたよ。こんな話だったー? 早く大きくなりたいと思っていたモミの木は、クリスマスが近づいた或る日、切り倒されてしまいます。飾り付けられ、子ども達に囲まれ、幸せを感じます。しかし…! それがモノクロの写真絵本に仕立てられています。モミの木は外国の少女が演じています。森の中にポツーンと立っている女の子。男の人がやってきて、少女を肩にかついで行ってしまう後姿。頭に星の飾りを付けて、多分緑のもこもこずるずるしたものを身にまとっている少女。 かわいくて、かわいそうな、大人のクリスマス絵本です。
→クリスマスつながり


▼ドジソンさん、ありがとう!

不思議の国のアリス・オリジナル 『不思議の国のアリス・オリジナル 新装版』(ルイス・キャロル 高橋宏訳/書籍情報社)

「不思議の国のアリス」の原本の復刻版です。 つまり、そもそもの初めに、アリス・リデルちゃんの為に、ドジソンさん(=ルイス・キャロル)が書いてプレゼントした本の復刻です(原題「地下の国のアリス」)。 活字ではなく手書き(のままの復刻)で、キャロルが頑張って描いた挿絵だってそのままです。絵はあんまり…上手じゃないけど、味わいがあります。


本体はこんなの。かわいいねぇ。これとは別に日本語訳と解説をおさめた本がセットになっています。親切設計だ。 そして、ささやかなオマケが! アリスのポートレイトの栞付き。アリスのポートレイトのカードの入った封筒付き。備品のある本コレクターとして、見逃せませんでした。 ここにはスペースがないので、詳しくは→ミニ特集・備品のある本にて。
→アリスつながり


▼いわゆるひとつのコレクターズ・アイテム?

いどの中 『いどの中 日本のライト・ヴァース3』(岸田今日子:編 和田誠:絵/書肆山田)

ライト・ヴァースって何? 調べたら書いてありました。「すこしおかしくて、すこし残酷で、ようするにライト・ヴァースはシリアスな詩の反対槻念なのであり、大ざっばにいってしまえば、俳句に対する川柳といってよかろう」(書肆山田さんのサイトの記事より引用)。 なるほど、巧い説明だ。その通りだ(笑)! 日本のライト・ヴァースは全4冊、世界のライト・ヴァースは全5冊出ています。うちの在庫は日本のライト・ヴァースの3のみ。でも、これだけでも、初めて見ました。いいなー、全部持ってる方。 『いどの中』に収録されているのは、別役実、野口雨情、岸田衿子、谷川俊太郎、北原白秋、工藤直子、室生犀星、石垣りん等々はまぁ当然として、中島みゆき! タモリ! 所ジョージ! 桑田佳祐! ですよ。すごいなぁ。犀星と桑田さんが一緒に載ってる本、この先ももう出ないんじゃないかなぁ。 私的お気に入りは犀星の「夜までは」と、工藤直子「ライオン」です。 小さめサイズ。和田誠さんの絵はぴったりだし、カバーを外した本体表紙もめっちゃ可愛いです。おすすめ。 (※書肆山田さんのサイトには、「重版中」って書いてあります。そのうちまた新刊で買えるようになるのかなー?)


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