虫、キライな方、ごめんなさい。私だって好きじゃないですけど、虫が出てくる話には好きなものもあるなぁと思いまして、思い切ってつなげてみました。 ▼既視感のあるブックレビューですみません。
「こおろぎ嬢」(「尾崎翠」収録作)
(尾崎翠/筑摩書房)
何度も何度も取り上げておいて、まだ飽きないのか、と
自分で自分にツッコミを入れたくなりますが、飽きないですね。(開き直り。)
声を大にして言いたいのは、やはり、尾崎翠作品の新鮮さです。
ちょっとおかしいですって、これは。異常ですってば。
なんであの時代にこんなにウキウキするような感触の小説を書けたんでしょうか、尾崎翠は?
あの時代には大島弓子も川原泉もまだいないのに、なんて言ったら語弊があるかな。
(熱狂的ファンの方、怒らないでね)
でも比較対象があんまりないんですよね。何十年経った今でも。
何度読んでも、少し唸って、その内そんなことは忘れて読み耽ってしまう尾崎翠作品、
どれもおすすめです。こおろぎ嬢はちょっと通(ツウ)好みの1篇。
→関連して
▼ほんとに古典。
「虫愛ずる姫君」(「堤中納言物語 角川文庫」収録作)
(角川書店)
虫を愛する姫君の話。そのままだなぁ。
そうか、昔の人は、捻った題を付けたりしないのね。
ヒロインの姫君はグロテスクな毛虫系が好きな変人です。
平安の昔から、特に女性は虫嫌いだという観念があり、
女房たちがみんなで虫にキャーキャー言ってるところなどを見ると、
昔の人が身近に感じられますね。
さて、この姫君も男子(おのこ)に懸想(?)されます。
というかチョッカイ出されます。
確かに私が男でも、虫にキャーキャー言う女の子より、
「これが、どうかしたの?」とか言って、摘み上げられた方がインパクトあるかも。
小学校の時、そんな男気あふれる少女がいましたね。
▼少女小説なのに。
「リンバロストの乙女 上・下 角川文庫」
(ジーン・ポーター/角川書店)
少女小説なんですけど、けっこう大人らしい恋愛感情があります。
終盤なんか、ちょっと物狂おしい感じの味わいでして、
我が家では、母から私が受け継ぎ、ハマって読んだ
親子二代のハマリ本です。
大体、ヒロインのエルノラは蛾を捕まえて売り、学費を稼ぐんですよ。
どう思います?
蛾ァ!?
ってびっくりしましたよ。美人なのに、蛾ハンター。
それと言うのも、実の母親が彼女を愛してくれないからです。
学費など出してくれません。エルノラは母を愛しているので苦しみます。が、
母親のそんな態度もワケアリで…。面白いです。
私はエルノラより、エディスになりたかったです。変ですか?
→玉の輿つながり
→ミニ特集vol.17・角川文庫マイディアストーリー
▼蚊は絶対にイヤ。
「蚊学ノ書 集英社文庫」(椎名誠/集英社)
ものすごく蚊に刺されやすいタチです。
私といれば、蚊に刺されないですよ。
蚊はみんな私のところに来るから。
敵を知るために、この本を読みました。
すごい蚊体験談が山ほどあって
びっしりとたかる蚊の大群の話なんてザラ。かゆくなりました。
ちょっと題名を失念しましたが、
椎名さんが何かの著書で例年より少ない(?)蚊に対して
「ほろびゆく自然、お前も蚊」って洒落てたのは爆笑でした。
▼どないな名前やねん?
「黒後家蜘蛛の会 創元推理文庫」
(アイザック・アシモフ/東京創元社)
黒後家蜘蛛の会(ブラック・ウィドワーズ)の面々は、毎月1回晩餐会を開く。ホストは持ちまわり。必ずゲストを一人連れてくる。歓談するうち、ゲストの身に起こった、どうしてもすっきりしない小さな謎の話になって…、みんなで推理するけれど、結局謎を解くのは、傍らで慎ましく話を聞いていた給仕のヘンリーなのでした。
高名な連作推理短篇集。
アシモフの謎っていーっつも半分はちょっとインチキ(あわわ)くさいんだけど、子供のなぞなぞに文句を言う人がいないように、アシモフの謎にも文句は無用。えー、それって単なるトンチじゃん?と思ったとしても、ヘンリーの答えが一番スジが通ってるのは確かなんですよね。
→入会したいつながり
▼ハエもイヤ。
「蝿男 講談社大衆文学館<文庫コレクション>」
(海野十三/講談社)
さーて、海野十三のお出ましです。
時代が滲み出ていていいですよね〜。
昭和初期。エログロナンセンス。
あぁ〜そういうの好き好きぃぃ〜!って方に(笑)。
「大阪の富豪に殺人予告が届いた。差出人は蝿男。
…猟奇的な発端から戦慄のラストシーンまで…」
(あらすじより引用)
▼もう二度と。
『こおろぎ』(リチャード・マシスン)
「幻想と怪奇2 ハヤカワ文庫NV」収録作
(ロバート・ブロック他 仁賀克雄編/早川書房)
幻想と怪奇という主旨で編まれた短篇集のうちの1作。
この短編を読んだら、もう二度と、秋の夜長に虫の音を楽しむことは
できなくなります。読みますか、やめときますか?
収録作は他に、ロバート・ブロック「ルーシーがいるから」など全11編。
大変よろしいです。シリーズ3冊揃えたいなぁ。
▼どういうことなのか。
「飛蝗の農場 創元推理文庫」
(ジェレミー・ドロンフィールド 越前敏弥訳/東京創元社)
not for
sale
すみません。未読です。
2003年の「このミス」の第1位(のはず)。話題になってましたっけ。
「ヨークシャーの荒れ野で農場をいとなむキャロルの前に謎めいた男が現れた。一夜の宿を請われ断るの段を経て、不幸な経緯から、ショットガンで男に傷を負わせたキャロル。看護の心得のある彼女は応急処置をほどこしたが、意識を取り戻した男は、以前のことを何も覚えていないと言う。幻惑的な冒頭から忘れがたい結末まで、悪夢と戦慄が読者を震撼させる。驚嘆のデビュー作(あらすじより引用)」
驚嘆と言う割には、あらすじがちょっと地味な感じなんですが、
登場人物のところに3人しか書かれていないところが異様で、とても気になります。
→記憶つながり
【追記】読了しました。
ついつい読まされましたが、私は腹が立ちました。
私の嫌いなパターンなんですよねー。むー。
▼昆虫探偵。
『名探偵カマキリと5つの怪事件』
(ウィリアム・コツウィンクル 浅倉久志訳/早川書房)
ホームズ=カマキリ、ワトスン=バッタ、そんなミステリ短編集。
虫の世界の事件を解決。児童向け。でも大人も楽しめます。
カマキリ探偵は細身でパイプ、バッタはバッタ博士ということで、明らかにホームズをイメージしていますな。
最近、虫ばやりですし、早川書房さんはもう一度、声を大にして宣伝して売ると良いと思います。
カマキリ探偵はバッタワトスンを食べちゃわないのか、非常に心配でしたが、大丈夫みたいです。ちゃんと協力してました。
「消えたチョウの怪事件」ほか、全5編収録。
→ホームズつながり
→変な探偵ランキング
▼花蝶図鑑。
『銀花(季刊雑誌)第六十号(60号、1984年冬)
特集:縁起菓子繪草子』
(文化出版局)
特集は、縁起菓子。こういう地方の縁起菓子を集めた本、好きなんです。特に当地金沢の金花糖、かわいいでしょ? 表紙にも写ってる鮮やかなお菓子です。
そして昆虫つながり向きのネタとしては、亀倉雄策「秘かな楽しみ 古典図鑑本の装幀」7p。驚くほど美しいです。西洋の古い花蝶図鑑って、あまり注目したことはなかったのですが、確かに素晴らしい。
→ミニ特集・雑誌銀花
▼細密な花虫画。
『銀花(季刊雑誌)第百十二号(112号、1997年冬)
特集1:熊田千佳慕の「花虫画」/特集2:柿の恵み』
(文化出版局)
熊田千佳慕さんと言えば、ハイ、非常に細密な花虫画のかたね、って思っていた私、本当にうっかり者です。
熊田千佳慕さんは講談社の絵本「ふしぎの国のアリス」でも有名なんですね。
そうかそうか。
花も虫もアリスも一見の価値があります。是非!
→ミニ特集・雑誌銀花
→アリスつながり
▼赤ずきん蟻。
『ありこのおつかい(絵本)※難有り』
(石井桃子:作 中川宗弥:絵/福音館書店)
絵本です。
アリさんのありこちゃんが赤い帽子をかぶって、
おばあさんのところへ、おいしい草の実を届けに行きます。
でもありこはみちくさをしてしまい、おかげで大変なことに。
サクっとカマキリに食べられていましたよ(笑)。
そしてカマキリはアレに食べられ…と、大変なことが続くわりには、
かわいいお話です。
絵本の中でもありこはすんごく小さくて…目を凝らしながら笑ってしまいます。
→クマつながり
▼ハマリ役。
『ファーブル昆虫記 少年少女世界の名作21』
(熊田千佳慕:絵
ファーブル 古川晴男:訳/世界文化社)
熊田千佳慕さんです。
上記↑、「銀花」の説明にも書きましたが、非常に細密な花虫画で有名なかたです。
この少年少女世界の名作のシリーズでは「ファーブル昆虫記」の絵を担当していらっしゃいます。なるほど。ハマリ役。
子供用だからと言って、手を抜きません。
しかし、表紙はフンコロガシか…。
他のでも良かったんじゃ…? という気もしないではありません。
※ちょっと体裁の違う版(?)が¥1260で流通中のようです。
他に…蜘蛛の糸、蜘蛛女のキスなんて言うのもありましたね。
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