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セサミ・ストリートが長寿番組になったワケ
『ティッピング・ポイント いかにして
「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』(マルコム・グラッドウェル/飛鳥新社)

それまではなんでもなかったある物、ある現象などが、一転大ブレイクする劇的な瞬間をティッピング・ポイントと言うらしいです。
ハッシュパピーがいきなり売れたワケ。セサミ・ストリートが長寿番組になったワケ。ニューヨークの犯罪率が急激に下がったワケ。など、思わず知りたくなる謎を上手に例に引きながら、ティッピング・ポイントのメカニズムを解明していきます。セサミ・ストリートって、サザエさん的な理由で続いてるのか思ったら違うのね。
この本の謳い文句には、「新製品をヒットさせるために」などと書かれていますが、ティッピング・ポイントを知ったからと言って、そんなことはできそうにないです。それは無理(笑)。言いすぎ。
でもなかなか楽しい知的探求の読み物です。

銀座の女の仕事とは? 
「恋愛ホテル 美しい恋愛論と一流ホテルガイド」(富田昭次監修/にじゅうに)

通俗的な題であり、かなりそのままの内容である。でも、なかなか面白い。8人の著者のホテルと恋愛の関わりについての考察や小説。そして、今ではもう夢物語としか思えない数々の超一流ホテルの紹介(夢のような写真付)。ホテルは半ば強引に、恋愛と関連付けて紹介されています。
店主が気になったのは、銀座「グレ」のオーナーの文章。「
銀座の女はくどかれるのが仕事ですから、その誘いをいかにやんわりとかわし、友情のようなものに変えていくか、という手腕が問われます。」うーん。そうなのかぁ。ねーねー、この文章を読んで「当たり前」だと思った?それとも「なるほどやっぱりか」と思った?私的には目からウロコでした。
他に、加藤和彦の文章に出てくる「昼下がりの情事」のストーリー要約が明らかに間違っているのが気になりました。「最後に彼女の心を掴むのは、男のひたむきな想いであることを歌い上げて行く」ってどう思う? 全然違う。むしろ逆。殿方にはそんな映画に見えるの? まさかね。

中村主水?
「元禄御畳奉行の日記 尾張藩士の見た浮世 中公新書」(神坂次郎/中央公論社)

時代は変わっても、あんまし人は変わんないんだねーと、しみじみ つぶやきたくなるような、江戸時代の武士・朝日文左衛門の日記「鸚鵡籠中記」についての本。「鸚鵡籠中記」って、なんと26年分の日記なんですよ。筆者はれっきとした武士なんだけれど、放蕩三昧。 毎日、お気楽に過ごし、妻に頭は上がらず、まさに必殺の中村主水のような人。でも 主水は裏でお仕事してる分、ずーっとがんばってるよね。中村主水の人物造形があながちフィクションゆえの誇張ではないという気までしてきます。お金もないくせに浮気をし、仕事と言えば、なんだか大したことではなくて よくそんなんで給料が出るよね、というレベル。ラクすぎるぞー。でも、江戸のダメなサラリーマンの人生は、ネットで人の日記を読むのが好きな わたしなんかには非常に面白いわけです。一応幕府批判もしちゃってるし。江戸の人生に思いを馳せるのもまた一興というところ 。ところでこれ、横山光輝に漫画化されてたの?知らなんだ…。

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記憶ってどういうシステム?
「記憶 講談社選書メチエ」(港千尋/講談社)

「記憶」は、気になってしかたがない話題の一つです。どういうシステムなのだろうと、知りたい欲求でいっぱいです。
アンビリバボーでも、記憶喪失の話は最大関心事(笑)。

記憶は一体どんなふうに蓄えられていて、どんなふうに使われるのか?不思議ですよね。ある事柄から、どんどん連想がひろがっていく、しかも無意識に。昔のことを頭の中でひっぱり出してる。でもひっぱり出すまでは、どこにあるのか姿も形も見えない。パソコンよりすごいのかな?  チェスの名手VSコンピュータは最近どうなってる?
完全にとは言いませんが、そんなこんなを解明してくれて、しかも、思ってもみなかった指摘をしてくれる良書。
写真が記憶の世界において衝撃的な発明だって、言われてみればそうですよね? でね、にもかかわらず、写真は人の姿を残すだけだけど、記憶における過去のイメージはその人を歌わせたり笑わせたりするって、言うのよ。うーん、そのとおりだ。

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名探偵は英作文の講義から生まれる?
「名探偵WHO'S WHO」(日影丈吉/朝日新聞社)

名探偵は好きですか?
日影丈吉が、名探偵50人について、薀蓄を傾けます。50人ですよ? 知らない人もいて、ふつふつと読みたい気持ちがわいてきました。ただ日影さんね、前触れなくネタバレをやらかしてくれるので、その辺もスリルがあります(笑)。

私的完璧な短篇ランキングにランクインしている、ハリイ・ケメルマンの「九マイルは遠すぎる」の制作秘話があって、ほほうと思いました。話のキーとなる例の短文を、実際に英作文の授業で使ったのだそうです。ふーん。そんな授業なら受けてみたいですよね。あと、ハードボイルドの巨匠チャンドラーの意外な人となりとかもあって楽しめます。ミステリ裏話って感じかな。

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ヒエログリフを書けるようになるって!
「ヒエログリフを書こう!」(フィリップ・アーダ/翔泳社)

まさかヒエログリフを書けるようになるとは思ってもみなかったので、びっくりしました。王家の紋章(細川千栄子/)でも映画「ハムナプトラ」でも、ヒロインがアレを読めるおかげで話が始まったり、危機一髪助かったりするわけですが、私なら絶対あそこで死ぬな、と。あれは書けないものだと思い込んでいましたからね。

それが、この本をよめばけっこう簡単に読めたり書けたりしそうなんですよ。ロマンの香りがします。「私もキャロルになれるかも」って(笑)しかもヒエログリフはかわいい。暗号にも使えそう。実際に使うかどうかはともかくとして、どうしても持っていたくなる本には違いありません。

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山田耕筰、ゲイに襲われる?
「はるかなり青春のしらべ 自伝若き日の狂詩曲」(山田耕筰/かのう書房)

かの山田耕筰の自伝。途中、耕筰はドイツで同性愛者に好かれてしまいます。見初められて(?)、ゲイとも知らず、2人で旅に出ることになりました。1等車1台を二人で貸し切り。なんかこれはおかしいぞ。さすがに耕筰が怪しんでいると、相手が出したのは、男の裸体の描かれた本。うーむ。でも「人間観察の機会」と腹をくくって旅をつづける耕筰。大物は違うね。相手の男に熱く迫られながらもイーブンな態度でお付き合いするのでした。その性癖さえなければ、知的で立派な人物という相手の男、ヘビの生殺し状態がちょっと気の毒です。
山田耕筰、どうやら作文の才もあるらしく、読んで面白い自伝です。團伊玖磨の解説も興味深い。

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キティちゃんグッズの第1号は?
「MY KITTY」(飛鳥新社)

昔の小物入れを整理していると、必ず出てくるキティちゃんグッズ。ボロボロになっていることもあれば、意外にきれいに残っていることもある。「あ、これ学校で使ってた!」と不意に思い出が蘇ることもしばしば。

数年前にまた再ブレイクしたキティちゃん。76年代の初代キティちゃんグッズは今じゃちょっとしたプレミアものなんですよ、お嬢さん。捨てないように。特にグッズの第1号はなんだと思います? プチパースです。写真が載っているんですが、これ、持ってた気がするなぁ。もうないけど。

記憶に引っかかるグッズの写真がたくさん載っててじっくり楽しめる1冊。

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カヒミ・カリィと山口椿と金子國義?
「リテレール No.13 '95秋号」(メタローグ)

雑誌リテレールは特集も書評も充実しててお気に入りです。

特にこの号なんて、特集はカヒミ・カリィで、執筆者があの山口椿・しりあがり寿・高山宏…、対談してるのが金子國義なんだぜ。あなどれん。
し・か・もー、メイン書評は「恋愛太平記」(
金井美恵子/集英社)。小書評では「ムジカ・マキーナ」(高野文緒/新潮社)を佐藤亜紀さんが評してる。運命を感じた号。

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森下洋子の洋服のサイズは?
「バレリーナの情熱」(森下洋子/大和書房)

バレリーナ森下洋子さんのエッセイ。普段の生活のこと、バレエのこと、ヌレエフやフォンティーンの逸話。むかし、バレエマンガに胸を熱くしたクチには、こたえられない1冊です。

森下洋子さん、もっぱら森英恵さんのお洋服を着ているそうですが。驚いたのは、そのサイズ。5号だって。なんじゃそれ。そんなんあるんか?

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ロレンスに会った日本人とは?
「アラビアのロレンスと日本人」(牟田口義郎/NTT出版)

なぜロレンスは愛されるんでしょう? 映画「アラビアのロレンス」のせい? ピーター・オトゥールがかっこよすぎるから? 少女マンガ「T・E・ロレンス」(神坂智子/白泉社)も泣いたなぁ。

そんなロレンスに会ったことがあるという日本人の話が出てくるのですが、その人自体が、大人物。彼はコナン・ドイルとも会って、ロレンスの話をしたらしいです。著者曰く、「『ロレンシアン』と『シャーロッキアン』双方の気を引いている」。いや、ほんとにね。快男児・薩摩治郎、すごすぎ。

当時の日本人の著述等で検証する真のロレンス・中東の姿。

ホームズとビアズリーの関係は?
「ホームズのヴィクトリア朝ロンドン案内」(小林司・東山あかね/新潮社)

ホームズの足跡を辿る、写真も豊富なロンドン案内。ホームズ作品の引用時には新潮文庫版のページ数も入っているので、コアなシャーロッキアンは、この本を片手に読むのも一興かと。

『高名な依頼人』でホームズが暴漢に襲われたのは高級フランス料理店『カフェ・ロワイヤル』の前。写真で見ると、超豪華な内装でちょっと気後れ。こんな店、入れないよ? これレベルの店に入ったこともないかもと考えると、まだまだ死ねないなと思いますね。
で、この店ですが画家ビアズリーもしばしば昼食をとったらしいです。

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