迷子になったらまずHOMEへ

■穴つながり
なんかありそうなんですよね、穴って。ちょっと不気味。

▼考える穴。

「あな こどものとも傑作集 ※送料無料」
(谷川俊太郎:作 和田誠:画 /福音館書店)

短いお話。絵本です。
でも和田さんの絵の進め方が非常に巧くて、少し、そわそわする箇所があります。これだけの話にこれだけの世界が詰まっている。
和田さんもすごいけど、もちろん谷川さんもすごいんです。
これだけの話にこれだけの哲学が詰まっている。

子供はあのいい匂いのする土の中を思い出してくれればいいと思うんです。穴から見上げる、丸く切り取られた空を想像してくれればいい。(表紙の絵、素晴らしいです)
大人は、多分、人生について考えるんじゃないかしら?
対象年齢は4才〜大人まで。うん、そうだね。
※流通中。出版社現在定価¥840

▼あ、この人って。

『虚ろな穴 ハヤカワ文庫NV』
(キャシー・コージャ 黒田よし江訳/早川書房)

未読なんですが…なんか聞いたことがあるぞ、キャシー・コージャって。
ん〜。
あ、思い出しました。
耽美なバンパイアもの
『ロスト・ソウルズ』の訳者後書きで、
柿沼瑛子さんが、言及していましたっけ。
『ロスト・ソウルズ』が『夜明けのヴァンパイア』に似ていると思う人もいるだろうが、
キャシー・コージャのほうに似ている、って。
残念ながらこれは、ヴァンパイアものではありません。よね?(未確認です、ごめんなさい)

「薄汚れた物置の床に、穴は口を開いていた。直径は三十センチくらいだが、中は無限に広い。ぼくの友達のナコタが、穴に異常な興味を抱いた。色々な物を投げ込んだり、カメラを降ろしたり、ついには生き物を穴の中へ…ぼくらは穴の研究にのめりこんでいく。だがある日、ぼくの体に異常が発生した! 奇妙な穴に取り憑かれて破局へ突き進む若者たちを描き、発表と同時に絶賛を博した、女流ホラー作家の輝かしいデビュー作。ブラム・ストーカー賞、ローカス賞受賞。ホラーの超新星、待望の日本上陸(あらすじより)」。

▼絶体絶命の穴。

『穴の底』
(『人譽幻談 幻の猫』(伊藤人譽/龜鳴屋)の収録作)

A5変形(110×190) フランス装 総360頁
表紙写真 武田花
頒価¥3230(税・送料込)

収録作 : 穴の底/雪仏/幻の猫/シメシロ/乳鋲/髪/猫の餌/瓶の中の指

メルマガでも御紹介しました。全8編。それぞれカラーは違えど、いろいろとピンチな話です。
特に「穴の底」は、いきなりやってきたちょっとしたピンチが絶体絶命に変わっていく時間の流れを描いており、妙に心に残ります。
人生には「もしかしたら、あの時、死んでたんじゃ?」ってことがあります。
裏山で迷子になったとか。自転車で川に落ちたとか。その瞬間には「まさか死ぬなんて」と思っている。でも、それが本当にヤバイんじゃないかと思われる状況に変貌していく時は、意外にあっさり訪れるのかもしれません。

※HoneyBeeBrandは
龜鳴屋の販売窓口(の一つ)となっています。定価ですが、新品です。龜鳴屋で注文していただくのと、まったく同じです。
→ミニ特集・幻の猫とともに
→猫つながり

▼カバーに穴。

「解体屋外伝」
いとうせいこう/講談社)

単行本版のカバーには、小さな穴が開いています。

解体屋とは洗脳された人の洗脳を解く仕事人。やり手の解体屋が昏睡から醒めるところから物語は始まります。昏睡の元は洗脳屋に敗戦したことなので、彼の脳には使うべき自分の言葉がありません。彼は既成の言葉(他者のテクスト)を使ってなんとか蘇ります。「おなつかしゅう!」と。ね、傑作の予感でしょ?
覚醒の間際、彼が
自分の言おうとしていることが、「他者のテクストの引用」に過ぎないのではないか、と躊躇するところが、よくできているし示唆的だなと思います。
あとは終幕までノンストップ、著者らしいアイディアいっぱいのエンターテインメント。
→記憶つながり
→変わった職業ランキング
→文庫版の在庫はございます。

因みに→「おなつかしゅう」→高橋和巳「邪宗門」。

▼穴s。

「穴 HOLES(単行本版)」
(ルイス・サッカー 幸田敦子訳 /講談社)

これを読んだからにはもう、穴つながりと言えば、これしか思い付かなくなりそうですね。
一応、児童書でしょうか。小学校5年生くらいから読めるでしょう。でも大人も充分楽しめます。私は夢中になりました。

本書の主人公スタンリー・イェルナッツは、運の悪い少年です。それは先祖ゆずり。ひいひいおじいさんがジプシーのおばあさんから豚を盗んだせいで呪いをかけられ、そのせいでイェルナッツの人々はやることなすこと上手く運ばず、まずい時にまずい場所に居合わせてしまうのだそうです。
スタンリーも盗みの疑いをかけられ、グリーン・レイク・キャンプに送られます。そこは更正施設とは名ばかり。レイクというのも名ばかり。水は一滴もない干上がった大地で少年たちはひたすら穴を掘ることを命じられます。1日1個の穴。
目的のない労働ってつらいですよね。仲間の少年達も意地悪するし…。
しかし、所長には目的があるようで、何かを見付けたら必ず申告するように言われます。どういうこと?

物語は、スタンリーの穴掘りの合間合間に過去に戻り、数々のエピソードにふれ、いろいろなできごとが絡み合って進んでいきます。非常に巧みです。
ハラハラドキドキするし、スタンリーの勇気と成長に一緒に考えさせられもします。良質の物語です。
カバーにも書いてあるから私だって先に言っちゃうけど、大逆転アリです。つまり後味もイイの! オススメ。
サイドストーリーらしいルイス・サッカー『道』を注文しようか検討中。

※流通中。文庫版も流通中。

▼川でも溝でもなく。

『オトコとオンナの深い穴』
(太田垣晴子/メディアファクトリー)

男と女の間にあるのは、深い川でも溝でもないんでしょうか。
太田垣晴子さんが、男女間のいろいろなエロいことについて、
調べて報告してくださる漫画エッセイ。
風俗とか変態とか愛人とかホストとか。
ヘェ〜と、思います。

太田垣晴子さんの芸風を逸脱しておらず、地味でクレバーな感じで、
本当に変態なことからは安全な距離が取られているので、本棚にもためらいなく並べられそうです。
ただ、中村うさぎさんや、岩井志麻子さんや、森奈津子さんなら、もっとガッツリ四つに組んでくれたんじゃないかと思うと、少し物足りない気も…しないではないような。

▼エアコンの穴。

『九月の恋と出会うまで』
(松尾由美/新潮社)

帯で大森望さんが言ってるとおり、「エアコンの穴からはじまる、知的でキュートな極上ラブストーリー。ミステリーとしても時間SFとしても一級品」。
ほんとその通り。
私、大森望さんとは気が合うんですよねー!

ま、ちょびっとだけ言うと、映画「イルマーレ」等と同じく、なぜ1年後の世界の人と話ができるのかに詳細な説明はなく、不思議でありえない話という了解事項は存在します。できるもんはできるのだと、問題なく了解できて、且つ、それが好きな方にはおすすめ。
映画「イルマーレ」、「オーロラの彼方に」とか、ちょっと思い出しました。

松尾由美さんの
『雨恋』が好きだった方にもおすすめです。
→タイムトラベルつながり
→クマつながり
※流通中

他に…
「大穴 ハヤカワ・ミステリ文庫」
(ディック・フランシス/早川書房)
「屋根裏の散歩者」(江戸川乱歩)

あとは、ゴルフですか。ゴルフつながりを作って、穴つながりとつなげたいです。