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■お見合いつながり
お見合いについて書かれた文章で、何が一番面白いのかと言えば、やっぱり断り方と断られ方、そして段々追い詰められていくその心理でございましょう。お見合いにおいては、自分だけの珍経験などというものは一つもなく、殆どが前人が体験済みのことと決まっています。

▼ノン・フィクション(笑)?

『ご立派すぎて』
(鈴木輝一郎/講談社)

作家志望の29歳。丹波十四朗青年が勤め先の倒産に伴い、帰郷。
伯母にすすめられてお見合いを始めます。
その悪戦苦闘記。
見合いのイロハを何も知らない十四朗を伯母さんが啓蒙していきます。そこが傑作。
軽やかな筆致です。
かなり笑えます。でもちょっぴりほろ苦いかな。
タイトルはもちろん、そういう場における一番無難な断り言葉。全然立派じゃないのにね(笑)。

さんざんノンフィクションかと聞かれたとこぼす「著者あとがき」も笑えますので、見かけたらあとがきを読んでみて下さい。

▼見合いのおわり

「おわりの美学」
「新恋愛講座 ちくま文庫」及び「行動学入門 文春文庫」収録作
三島由紀夫

三島由紀夫のおわりの美学。
あらゆることの終わりについて語ってくれています。
軽妙洒脱な筆致です。

見合いのおわりなる項では、見合いが済んだ時の挨拶、及び断り言葉について考察。
ニヤニヤさせてくれます。
「─人間の主観の核ともいうべきカンというものは、意外に正確なものを射当てるので、お見合いというのは、血統書つきの犬や猫のお見合いと同様、人間の動物的本能による判断の正しさに基礎が置かれている」。
これは三島さんの見合い観でしょうか。スルドイですよね〜。
結構うなずけます。1度会ったくらいで分からないと世間では言いますが、意外に分かるものです。
その他、
電話のおわり、結婚のおわり、美貌のおわりなどの章も忘れられません。
一読の価値アリ。
→電話つながり

▼意外にいい男。

『ターン─三番目に好き 集英社文庫』
(氷室冴子/集英社)
not for sale
友人に貸されました。
氷室冴子さんと言えば、少女小説の大家でございます。
私は『なんて素敵にジャパネスク』を泣いたり笑ったりして読みました。
今思い出しても、再読したい。
最近は少女小説家の方々が大活躍ですので、
もうあんまり偏見もないとは思うのですが、本当に甘く見てはいけません。
少女たちをあれだけ熱狂させるということは、<何か>があるのです。
このお話にも、「よく分かってるよな〜」と思わざるを得ない、
オナゴの心の機微に通じた、心憎いばかりのささやかな日常があるのであります。
世の中の大恋愛小説のような華やかさはないですが、等身大のトキメキが…(なぜかやや赤面)。

ヒロイン田中鞠子は24歳。3ヶ月前にお見合いをしたばかり。
相手の渡辺クンは意外にもいい男で申し分のないお話なのだが─。
意外にいい男というのは、悩みの種になりますよね。
→何番目つながり

▼一気読みできる回想録!

「馬込の家」(伊藤人譽/龜鳴屋

『幻の猫』の著者伊藤人譽さんの回想録。
犀星の馬込の家、留守居時代の話が主。

人譽さんの青年時代の話もありまして、
大家のおばさんにすすめられてお見合いをしていらっしゃいます。
おばさんは相手の娘さんたちに会ったこともないくせに、
あれこれと写真を評して人となりを断じていきます。
ププッ。
そこのところが、最高に面白いんですよ。
一つ一つのエピソードが磨かれた小石のようにキラリンと光っています。
じつに巧いです。
→庭つながり

▼ちょっとバブリー。

「お見合事典 25ans流 別冊25ansエレガンスブック24」(婦人画報社)
(ムック本です)

お見合いマニュアル本です。
動機、条件、準備、出会い、決断の全5章。なるほどねぇ。
章題を読むだけでも、相当「おぬし、やりおるな」と感じます。
第1章:動機の小見出しは順に、意志・夢・現実・適齢期・あせり・仲人、っすから。
私は本当に結婚したいのか? から考えさせてくれます。
女性の大好きな心理テストや、チャート式テストも各種揃っております。
「あなたの妥協点発見チェックシート」などいうものも有り。かゆいところに手が届いています(笑)。

もちろん、実践用マニュアルとしても役に立ちます。
ただ、発行年のせいか少ーしバブルの残り香がして、不況向きじゃないかもね。
→役に立つマニュアル本つながり
→玉の輿つながり