電話というのは、相手の顔が見えないところにドラマ性があるらしく、小道具としても舞台そのものとしても、いい味を出してくれます。
関連項目→通信手段→手紙つながり▼好きねぇ。
「もしもし」
(ニコルソン・ベイカー 岸本佐知子訳/白水社)
あの『中二階』の著者ニコルソン・ベイカーの電話小説。
註釈小説の次は電話小説ですか。
そういう仕掛けでギョッとさせるのがお好みのようです。
電話小説と言うのは、最初から最後まで男女の電話での会話で小説が進行するんです。ほんとにそれだけ。
説明もなし。会話のみ。
会話からシチュエーションを想像するだけです。内容は、エッチ。
でも真面目なエッチさと申し上げてよろしいでしょう。
→関連して『中二階』
▼こんなオジサンと知り合いたい。
「お電話倶楽部 ちくま文庫」
(舟崎克彦文、林恭三絵/筑摩書房)
メルヘンです。
いいなー。私もこんなオジサンとお近付きになりたいです。
さみしいとき、手持ち無沙汰なとき、
いつでも話を聞いてくれて、相談にのってくれる。
留守なんてことは絶対ない。そんなオジサンです。
世界の果てにいても大丈夫。オジサンが電話に出てくれないことはありません。
1月から12月までのミニストーリーです。
お正月の「三が日」さんから電話がかかってきて、
「タロット占いをしています」と言ったら怒られたオジサン。
おとなしくコタツでみかんを食べて過ごすことにしたとか(笑)。
ミノムシの奥さんたちのミノファッションの流行りについての話とか。
(ケヤキのパッチワークが今年の流行だって)
林恭三の絵がぴったりしっくり。
心の平安のために、鞄に入れておきたい1冊です。
▼天才二人の電話。
「高橋悠治+坂本龍一 長電話」
(本本堂)
水牛楽団の高橋悠治さんとあの坂本龍一さんの長電話(だと思う)。
普通の人の長電話と同じで、そりゃもう細かな項目について縦横無尽に語り合ってて、なかなか感心することの多い本。
でも一番印象的だったのは、高橋悠治の人物紹介で、
「「あなたは誰のために作曲するか?」の質問に「人類が絶滅したとき、人類にとって代わる新しい<知性>のために」との発言は今や伝説となっている」
って書かれているところ。どこかで聞いたその言葉、あなたが言ってたのね。
→ビニールカバーつながり
▼電話のおわり
「おわりの美学」
(「新恋愛講座 ちくま文庫」及び「行動学入門 文春文庫」収録作)
(三島由紀夫)
三島由紀夫のおわりの美学。
あらゆることの終わりについて語ってくれています。
軽妙洒脱な筆致です。
電話のおわりなる項では、電話の結び言葉について考察。
確かにスマートな結び言葉って難しいかも。
また、旅先から電話したときなんかに、
それまでは楽しく話していたのに、
最後になんかいつも含みのある、気になることを言って切るのは女で…
なんていうところ、さすがミシマです。うん、そうね。
でも女の側から言うと、男だってそうだと思うんですけど。
最後のものの言い方が素っ気なかった気がして、
切った後、なんだかもう一度電話したいアノ感じ。
「結婚のおわり」なる考察も勿論あって、「いっそ離婚式をやればいい」と
言っています。さらに、「夫婦であること自体が夫婦の目的」なので、
「芸術のための芸術を芸術至上主義」とすれば、
世間の夫婦は「結婚至上主義者」だとか。ニヤリとしてしまいません?
他には、美貌のおわりの章も忘れられないです。「美女は二度死ぬ」って。
つまり、美貌の死と肉体の死、ね。うーむ、なるほど。
→離婚つながり
▼小ネタ。
「タウンページのなぞときたい 朝日文庫」
(丸谷馨/朝日新聞社)
電話に関する小ネタ集。
よくこんな疑問を抱いたもんだねと、疑問の方にも感心します。
▼他に…「ドクター・フー」シリーズ
|