■変身つながり
変身する本。バビル2世を見ていた頃は、ロデムに憧れたものでした。
でも残念ながら、あのようなかっこいい変身本は今回見つけられませんでした。(ファンタジーやマンガならたくさんあるので、それは選外で。)だから今回はあんまりかっこよくない変身ばかり。
こうやって改めて挙げてみると、(カフカは別として、)何か心に並外れた負担のかかったときに動物になってしまう、という思想がわたしたちにはあるようで、興味深いですね。「男がケダモノになる」というレトリックも出所は同じか?(そうか?)
▼読書のたのしみ。
「モンティニーの狼男爵」(佐藤亜紀/朝日新聞社)
妻の浮気を知って変身を繰り返す田舎の男爵の話。
この作者ゆえに一筋縄ではいきません。自尊心がテーマ、かと思います。
▼忘れられない名前。
「変身 新潮文庫」(カフカ/新潮社)
古典過ぎますか?
グレゴール・ザムザは或る朝、目覚めると巨大ないも虫になっていた。不条理小説の代表作。
グレゴール・ザムザという名前もインパクト大で忘れられない。
グレゴール・ザムザって日本名で言うと、どの手の名前なんですかね?
んー、サッサ・ナリマサとか? シイナ・キッペイとか?
それとも、もっと奇抜な手合い?
▼ちょっとしたトラウマ。
「山月記」(中島敦)
これも古典過ぎますか? でも「変身」(カフカ)に並んで、世の少年少女の心に巨大で深遠なインパクトを与え続けていると思います。 特に山月記を読むのは、自負心と自己顕示の塊みたいな時期なので、胸にずしっと来るんですよね。
▼なりたい?
「乳房になった男 集英社文庫」(フィリップ・ロス/集英社)
ある日、ケペッシュ教授は乳房に変身。
顔は乳首。
オイオイオイ。なんなの?なんのつもり?
と思ったら、<女としてエクスタシー(笑)を感じながら、
男として思考すること>。これがテーマのようです。
それを<昏迷>と表現することに賛成するかどうかは大いに意見の分かれるところでございましょう。
…。
と、私は、主に性的な部分に着目したのですが、
解説者の言う「人間が体の一部になってしまうこと、受動的、
聴覚的な存在になることは、現代人の存在形態を鋭く突いている」、
この意見に感服。なるほどね。
表題作の他、「エプスタイン」「狂信者イーライ」「ユダヤ人の改宗」など、
全6編を収録する短編集。
ちょうの姿が!
「ちょうになったぞう キンダーメルヘン傑作選11」(佐々木マキ:作・絵/フレーベル館)
佐々木マキさんの絵本です。さすがです。目を奪われます。いい絵だ~。いい色だ~。
蝶になりたい子どもの象のお話。ほんの19ページの短いお話。でも、蝶になった象の絵がめっちゃくちゃ可愛くて、忘れられなくなります。
▼そういう変身。
「変身の恐怖 ちくま文庫」(パトリシア・ハイスミス 吉田健一訳/筑摩書房)
帯は「人を殺してしまったはずだ」。
チュニジアで人を殺してしまったはずなのに、死体は片付けられ、普段どおりの生活が続く。殺人はありふれたことだから。
「奇怪な状況に慣れ親しんでいってしまう心の恐怖…(あらすじより)」
解説「異境のハイスミス、そしてジャンルの異境」(滝本誠)も面白いです。
他に…
「ジャガーになった男」(佐藤賢一/集英社)、狼男など
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