博物館の出てくる話。美術館とはまた違って、雑多で、妄想の広がりがありますね。 ▼うずうずします。
「永遠の森─博物館惑星」
(菅浩江/早川書房)
抒情SF「メルサスの少年」で、その名を轟かせた菅浩江さん、今回もやってくれました。抒情的なだけじゃなくて、楽しい。舞台は全世界の美術品、動植物が収められている未来の巨大博物館。主人公はデータベース・コンピュータに頭脳を直接接続させた学芸員。収蔵品の分析鑑定がお仕事です。毎回一つの美術品が持ち込まれて、それにまつわる事件、できごと、人との出会いがあるわけ…と聞いてうずうずしちゃった人には、おすすめの1冊。期待を裏切りません。
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※文庫版でも流通中。
▼奇人変人。
「ウィルソン氏の驚異の陳列室」
(ローレンス・ウェシュラー/みすず書房)
帯に「傑作ノンフィクション」とあるのですが、
それがなければ、絶対に小説だと思ったところです。
んー、ノンフィクションかー。ほんとに?騙してない?と
思ってタメツスガメツしてみたけど、どうもほんとにノンフィクションみたいよ。
ロス郊外の博物館「ジュラシック・テクノロジー博物館」は、
ヘンテコな陳列物でいっぱい。
人間の角、彫刻を施された髪の毛(*接眼レンズを使うと彫刻が見える)、
人間の心臓を納めるオニキスの箱
(血の部分が燐光を発するらしい─研究のため一時的に
取り外されています、という謝罪の標識あり)、などなどなどなどなどなど。
おもしろすぎ!言わば、グロテスク系のクラフト・エヴィング商会。
うそだよね─ほんとじゃないよね?でもほんとのものもある?
この揺らぎははっきり言って快感です。管理者のウィルソン氏、天才ですな。
註釈が長いのも笑えました。なにしろ註釈で一章を成してますから。
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▼やっぱり、いい。
「幻想博物館─講談社文庫─」
(中井英夫/講談社)
店主お気に入りのとらんぷ譚。
傑作幻想小説短篇集です。
私が死んだら、墓前に供えてもらいます。
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▼幻想博物館。
「バーナム博物館」
(スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸訳/福武書店)
ミルハウザーの短編集です。
表題作「バーナム博物館」は、ある博物館の話です。
私はそこへ行きたい。
どうして私の町にはバーナム博物館がないのだろう。
もしもバーナム博物館があったら、私はそこへ通い、
2度と本を読まないかもしれない。
でも私の町にバーナム博物館はないから、私は本を読み、
『バーナム博物館』に出会うのでしょう。
「バーナム博物館」とは、書物の世界のことだとも言えるかもしれません。
このページ上述の『ウィルソン氏の驚異の陳列室』を思い出しました。
あるいは、『チョコレート工場の秘密』のチョコ工場。
幻想の世界に、身を捩るほどの切ない憧れを抱いている人向け。
「自動人形、書物の世界、少年、ゲーム、魔術、博物館…万華鏡のようなミルハウザーの世界(帯より)」
※Uブックス版でも流通中。
他に…キルヒャーの世界図鑑
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