怖い話によく出てくる気がします。閉所だからでしょうか?
関連項目→階段つながり、→閉所つながり▼エレベーターが怖くなる。
「エレベーター」
(アンリ・フレデリック・ブラン 石井啓子訳/新潮社)
ここに出てくるエレベーターは、日本の近代式のものではなく、映画や旅番組に出てくる、扉が鉄格子みたいに透けてて、ガッシャンと閉めて動かすタイプのものです。
ですから、主人公シャルルの乗ったエレベーターが4階と5階の間で動かなくなったからと言って、呼べば聞こえる。そばに誰かがいる限り、閉じ込められて出られないなんて、あり得ないわけです。普通は。
ところが。
シャルルが大声で叫んでようやくやって来たアパルトマンの管理人(女)は、こう言います。「そんなところにわざわざ入り込もうなんて、いったいどういうつもりなのかしら」
ガーン。第一のショックです。
挙句、修理会社を呼ぶことも断られます。今日はもう遅いから、って。
「美容院に予約をいれてたのに、あなたのせいで、危うく時間に遅れてしまうところだった。一時間か二時間したら戻ってきます。あなたのこのささやかなトラブルについては、落ち着いたところで、あらためてゆっくりお話しするってことで。じゃあ、のちほど」
行ってしまいました。ガーーン。
そして帰ってきた彼女にはマイセンの尿瓶を渡されます。
彼は毎日、彼女に出してくれるよう訴えますが…。
アパルトマンの他の住人たちが彼の存在を知っても状況は好転しません。
「けっしてくじけないことよ」とか「頑張り抜け」とか、励まされるだけ。
そう、その辺り、なかなかスルドイ社会批評だと思います。
変な人達の中で一人。意志の疎通のないもどかしさ。ギャップのおかしみ。
エレベーターの国のアリス、とも言えるかも。
▼やっぱりエレベーターが怖くなる。
『エレベーターの人影』(L・P・ハートリイ)
(「幻想と怪奇1 ハヤカワ文庫NV」の収録作
レイ・ブラッドベリ他 仁賀克雄編/早川書房)
少年にはいつもエレベーターの隅に人影が見える。
幻想短編らしい味わい。
エレベーターのイヤな感じが、短い中に全部つまっています。
因みに本書は、幻想と怪奇という主旨で編まれた短篇集。
収録作はパトリシア・ハイスミス「すっぽん」、ブラッドベリ「女」、
ロバート・ブロック「ポオ蒐集家」など全14編。大変よろしいです。
※同文庫から新装版で流通中。
→ミニ特集・名アンソロジー
▼まやかし?
「まやかしエレベーター 世にも不幸なできごと6」
(レモニー・スニケット/草思社)
※画像は1巻目です。
映画化もされました。
著者自らがわざわざ宣言している通り、ハッピーのハの字も見当たらない不幸話です。不幸の百貨店。
両親を亡くしたボードレール家の幼い3兄弟たち。遺産はありますが、長女ヴァイオレットが成人するまでは、使えません。遺言で親戚に預けられることを決められているので、他にどんなに良い人がいても、イヤな親戚に預けられます。当然遺産は狙われて…。ハッピーエンドはナシ。しかもこれがまだ「最悪のはじまり」だと言うんですから、困ったものです。一人じゃなくて3兄弟なのが救いですか。
で、「まやかしエレベーター」が6巻目。もちろんまだまだ不幸です。
→姉弟つながり
→不幸ランキング
▼大きななぞなぞ。
「阿弥陀(パズル) 幻冬舎文庫」(山田正紀/幻冬舎)
not for sale
お風呂本にしていました。
薄めですぐ読めるミステリーです。
謎以外の描写等は最低限で、ほぼ謎だけが描かれています。
─「恋人がエレベーターに乗ったまま戻ってこない」という男の訴えを聞いた警備員がビル内を捜すが女の姿はなかった。監視カメラの目をかいくぐり、ビルの外に出ることは不可能な状況。女の行方は、そしてなぜ姿を消したのか。本格ミステリーのひとつの到達点と称された傑作長編(あらすじより)
小説というより1冊まるごと大きななぞなぞだと思って読むと良さそうです。
章題も、「忘れたのは何か?」とか「どうして臭うのか?」とかね、そそるのです。
でも章題を熟読すると、ネタバレになりそう。御注意。
▼他に…『ガラスのエレベーター宇宙にとびだす』(ロアルド・ダール)
映画の世界にも印象的なエレベーターがいろいろあります。
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