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えぇっ、続いてたの?
『2001年宇宙の旅、2010年宇宙の旅、2061年宇宙の旅、3001年終局への旅(4冊セット)※送料無料』(アーサー・C・クラーク 伊藤典夫他訳/早川書房)

すみません、知らなくて。ズラリと並んだタイトルを見てビックリ。2010年くらいまでは把握していた気もしますが、まさか3001年まで行ってるとは存じませんでした。2010年では、2001年の事件の調査のため旅立つ船、2061年では、再び接近したハレー彗星の調査、そして3001年では2001年にアノHAL9000によりアレされてたアノ人が登場します。

と、一応ネタバレないように書いてみましたが、今更隠しても仕方がないほど有名すぎるのかしら? その辺のところ、ちょっと自信ナシ…。

3001年がシリーズ完結篇です。

ピンポンパンとドリフの関係。
『A面B面 ちくま文庫』(阿久悠+和田誠/筑摩書房)

作詞家の阿久悠さんと、和田誠さんの対談形式で、みんなが知ってるあの名曲の制作裏話や歌にまつわるアレコレを御紹介。70年代の歌謡曲が多いです。
私の好きな歌が多くて興味津々。しかも最近、流行りですもんね、あのあたりの歌謡曲。なかなかタイムリーな本だと思います。今から売れるかも。品切れのようですが、重版したらどうでしょうか、筑摩書房さん。

しかし、これも阿久悠、あれも阿久悠かよ? って驚きがいっぱいでした。すごいですね。リンダもジュリーも、ピンク・レディーも、八代亜紀も、私の好きな曲は全部阿久悠作詞じゃんかーっ! うへぇ。ピンポンパン体操もですよ? ♪ズンズンズンズンズン…ピンポンパンポン しかもこれ、阿久悠さんによると、一種のパロディなんですって。当時あったものが全部出て来てるんですって。なんとズンズンはドリフターズから。知らんかった。

「読めば必ず歌いたくなる!」とカバー紹介文にある通り、出て来る曲の歌詞を読んでいると、歌手の声まで耳によみがえってきて、カラオケに行きたくてたまらなくなります。
♪しみじみ飲めば、しみじみとぉ〜 想い出だけが行き過ぎるぅ〜 涙がポロリとこぼれたらぁぁぁ〜(熱唱)

こんなんあったんか〜。
『愛してるゥ! 集英社文庫コバルトシリーズ』(現代言語セミナー編/集英社)

あのね、いろんな小説に出て来る名セリフや有名人の名言を集めた名言集ってありますでしょ? あれの、コバルト文庫版です。
つまりー、
コバルト小説に出て来る名台詞をテーマに分けて編集した<コバルト小説名言集>なんです。

「しかたないわね。どうがんばっても泣いてもわめいても、終わった恋は、とりもどせないわ」(『春の別れ』落合恵子)
「恋はいつも、理屈じゃないところから始まる」(『恋はいつも切なくて』唯川恵)
なんていうオトナなモノから、
「私の網膜を占領しているのは、ユウ、あなただけ。」(『恋する乙女はふぁいてぃんぐ!』五代剛)
などという、すこぶる付きの直截さ、まで。これを通して、いろんな芸風を内包しているコバルト世界が見えてきますな。

現代言語セミナー編。角川文庫でいろいろと名言集を編んでる著者名と同じですね。こんなこともやってたのか〜。

→ミニ特集・コバルト文庫
→ミニ特集・名言集

ピーターパン、かわいすぎ。
『雑誌 月刊MOE 1989年2月号』
(ケイエス企画)
※難有り、注意。

どんな名作にも舞台裏はございます。アリス、星の王子さま、プーさんなど、そのバックボーンの物語も興味深い名作は多いですよね。
あまりにも名作すぎて、(しかもアニメで見たので)、私が実際には読んでいなかったのが、「ピーター・パン」。この雑誌の特集記事で初めて作者バリの人柄を知りました。ピーター・パンのモデルになった少年たちも。
うーん。アリスとキャロルに似てる感じがするなぁ。バリの少年たちへの愛が。でも別にやらしくはないです(失礼、ほんとにごめんなさい)。切ない。バリが偶然知り合った美しい女性の5人の子息たち。自分は結婚していて、子供はない。彼は少年たちの第二の父親のように愛情を持って接し、少年たちの両親の死後は養子としますが、1人は戦死、1人は事故死。…。その後、寡作になったバリは印税や上演料のすべてを児童専門病院に寄付したそうです。左様であったか…。うる。
少年とピーター・パンごっこをしているバリの写真が本当に楽しそうで、見蕩れてしまいます。さらに、白人の子供はたいていみんな天使みたいですが、ここのウチの子供は真実、天使。かわいい! ピーター・パン、噂に違わず、美少年じゃん。

→ミニ特集・名作の舞台裏

宇野千代と沖田浩之と萩原朔太郎。
『しあはせな話 中公文庫』
(宇野千代/中央公論社)

宇野千代さんの随筆って、和みます。宇野千代ワールドとでも申しましょうか。恋多き女ですから、普通に一般論を語っている最中にも、自分の体験を回想しがちなんですが、それが微笑ましい。いっぱい思い出の引き出しがあって、それを時々開いて見ている様子が、ほんのりあたたか。
この『しあはせな話』は、また特別にあたたかな話題が多くて、ほっこりした気持ちになりましたよ。

宇野千代の元を、沖田浩之を連れた山本陽子が訪ねてくる話が出てきます。山本さんの年若い恋人として描かれる沖田浩之が、ブラウン管では見たこともないような好青年ぶりを発揮していて、感銘を受けました。お年を召した御婦人の目から見た、好ましい若い男像。そういう視点。なるほどー。その話と、萩原葉子さんが孫の友君を連れてくる話が対比して描かれているのが「友君と沖田浩之」という1篇。まさか、沖田浩之と萩原朔太郎がいっしょに出て来る随筆が存在するとは思いませんでした。さすがです。
また、自分が26歳の時に書いた童話を自画自賛している、「私は天才ではないか」。
「眼鏡をかけた女は女とは言えない」と言っていた宇野さんが、年をとって眼医者に行き、「その1週間後には、私は女ではなくなった」という「私は女ではなくなった」など、地味ですが、微笑ましいオススメ随筆多数です。

女王さまと私。
『シャネルに恋して』
(マリア・ケント/文化出版局)

ココ・シャネルについての本と言えば、「獅子座の女シャネル」が有名でしょうか? でもあれは、それなりにイメージをこわさない美しいシャネル像、シャネルの一生だったように記憶しています。
これは違うんですよぅ。著者マリア・ケントは、テキスタイルデザイナー。彼女が初めてシャネルに出会った時、彼女は名もない娘で、シャネルはすでに年老いていました。年老いても尚、存分に権力をふるい、誰からも恐れられる暴君でした。それでいて、目は確か。彼女の天与の才はまだまだ健在。マリアの織る布地がシャネルに採用され、マリアは、シャネルの司る<美>にそぐわないものは徹底的に冷酷に排除されてしまう世界に、足を踏み入れることになったわけです。
そこからの人間ドラマです。愛憎劇と言ってもいいでしょう。
少なくとも、私にはモード界の裏話、とは思えませんね。
こわいくらいです。
どちらかと言うと、一夜にして、主人の寵を失ったり得たりする栄枯盛衰のハーレムものに近い手触り。しかも王様は神経質な暴君と来たもんだ。大変です。マリアはそこで腕一本で立たねばならないんですよ。
モード、女の戦い、ドロドロ、栄光、裏切り、そんなん好き!という方に。

少し関連して?→モデルつながり→成り上がりつながり

日本女子、青山夕紀、大リーガーになる。
『赤毛のサウスポーPART2 集英社文庫』
(ポール・R・ロスワイラー/集英社)

いや、小説ですけどね。
赤毛のサウスポーの2作目です。1作目も素敵なカバー絵でしたが、これもいいっすね〜。

輝ける女性第リーガーの第1号の活躍を描いた前作。続く今回は副題が<2年目のジンクス>ですから、レッド嬢も大変ですな。

さて、レッドのビバースには「
回転レシーブの特技を持つ史上最も衝撃的な遊撃手・青山夕紀」が加入。くすす。どないやねん!とは言わずに、読みましょうよ。PART2の噂は聞いておりましたが、まさか日本女性が加入して、回転レシーブをしていたとはツユ知らず、今回入荷して驚きました。
ワールド・シリーズに優勝したビバースと読売ジャイアンツの日米決戦っちゅーのもあるみたいですよ。野球好きはわくわく〜?

→野球つながり
→赤毛つながり
→変な日本ランキング
→左利きつながり

ほんとにあるんだなぁ。
『妊娠した男 催眠セラピストの7つのカルテ』
(ディードリ・バレット/朝日新聞社)

よく映画なんかでありますよね。小説でもあったように思います。理由は不明だけど、妊娠しちゃった男性。
たいていはコミカルに、その騒動を描きますね、いろいろな人間ドラマを織り交ぜて。
しかし、これは本当の話。いや、本当ではないのですが、本人は大真面目なの。「おれ、妊娠したかもしれないんだ」って。
副題にあるとおり、<セラピストの出会った興味深い7つの症例>ということで、じつは彼も心の問題で想像妊娠してるんです。興味本位で読んで、ちょっとしんみり。彼はゲイで、いっしょに暮らしてた男性が死んじゃったんですって。彼とつながりを持っていたいという気持ちの現れが想像妊娠。なるほどなぁ。
その他の症例は、自殺した姉の幽霊に悩まされる<騒がしい幽霊>、多重人格の中にジャンヌ・ダルクを抱えた女性など。人間心理の複雑さに思いを馳せつつ、謎解きの要素にハッとする、知的読み物です。

やっぱ違うんや。
『英語になったニッポン小説』
(青山南/角川書店)

これも気になるネタなんです。
ニッポンの小説が外国で翻訳されたと、そこまではよく聞かされますが、果たしてどんな風に訳されたのか? 正しく伝わっているのか? 読者の反応は?
そういった事後の成り行きについては、あまりよく知らないし、知らされない(ような気がするんですが)。

一度、そこんとこをハッキリしてほしいぜ、と思っていたので、この本に出会えてイッシッシでした。
著者も翻訳家ですしね、まちがいないです。

さて、その輸出事情が紹介されているのは、『キッチン』(吉本ばなな)、『69』(村上龍)、『虹の彼方に』(
高橋源一郎)、『象の消滅』(村上春樹)、『兎』(金井美恵子)、『夢使い』(島田雅彦)、『トラッシュ』(山田詠美)など。

青山さんは、原文を訳文に照らして、検討してくれるので、かなり納得できます。<『キッチン』の英訳が原文よりわかりやすい>なんて、なかなか面白い。
『セケン・ムナサンヨー』みたい。あと、あの金井美恵子の文体はどう訳された?、とか、源さんの意図は伝わるのかなど、湧き上がる疑問を解決してくれる、かゆいところに手が届く本です。オススメ。

100億の借金どうする?
『借金王 角川文庫』
(小島宣隆/角川書店)

昔、テレビ番組で見た覚えがあります。(ちょっと数字はうろ覚えですが、)バブル期に大儲けしたのにバブルの崩壊で100億の借金を抱え込んだ男。今も元気で、会社を経営。数千万の借金は数百万に。数億の借金も月5万(だったかな?)の返済でOKに。そんな内容の番組でした。
なんじゃそりゃー。
と思うでしょ。でも、要するに銀行が持ってる担保(不動産)の価値が下がり、担保を売っても仕方がない。それでー、どうのこうので(笑)、ほんのちょっとでも、まったく回収できないよりマシとかなんです。銀行は不良債権をナシにしたいので、銀行の方からいろんな手を考えてくれるわけですな。目からウロコでした、その番組。
あの時の男が、この著者だ!この顔にピーンときましたもん(笑)。
うん、たくましいです、借金王。もう一度、詳しく借金王の話を聞きたいと思っていたので、興味深く読めました。こんなような人にイヤな思いをさせられたことのある人には、おすすめできません。が、雲の彼方の<億の話>を聞いて、目の前の<1万円>の話を忘れたい人にはオススメ。…私のことか?

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