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■森家つながり
森鴎外一族の著書は数多いです。文学界でもっとも有名で、もっともスキャンダル多き一族ではないかしら?森鴎外の子供は4人。先妻の子が於菟、後妻の子が茉莉、杏奴、類。
関連項目→何世つながり姉弟つながり

▼まずはこの人。

「贅沢貧乏 講談社文芸文庫」
森茉莉/講談社)

甍平四郎とは誰かご存じだろうか? では、真島与志之は? ではでは葭雪俊之介は? 

鴎外の長女、森茉莉。小説もいいけれど、随筆・評論がじつに良いです。まぁどれをとってもハズレなし、という珍しい人ですが、せっかくなので紹介すると、この「贅沢貧乏」収録の「降誕祭パアティー」や「文壇紳士たちと魔利」は、文壇ゴシップも茉莉の毒舌も堪能できる、ワイドショー好きにはこたえられない逸品です。 
→毒舌ランキング

▼あ、あれ? ─困ったちゃんの随筆。

「鴎外の子供たち ちくま文庫」
(森類/筑摩書房)

鴎外の末っ子・類。茉莉の著書の中に出てくる類は、
うすぼんやりした姉を助ける普通の人なのですが、
これを読むとすべてがひっくり返り、そこには推理小説のどんでん返しのような
ある種清々しさがあります。

一読して森類という人の純真な魂は伝わってきます。
純真な人は周囲を困らせますよね。
純真な魂と恐るべき記憶力(これはお家芸なのかしら)と、
恐らくは純真さを根拠にした独断とで描かれる森家の内幕。
うーん、「森家外伝」ってカンジ?
本人は全然ピンと来てないみたいだけど、周囲の人はきっと大変。
子供が世間とか周囲の思惑を何も考えずに書いた作文なんだもん。
さらに付け加えると、すごく特異な文体だと思う。最初から終わりまで
まったく同じテンションなの。緩急がない。だから途中で止められない。
今もこれを書くために開いて、通読しました…。
でも不思議と元気の出る本。失業中や浪人中の方にオススメしたいと思うのは私だけ?
→姉弟つながり

▼友達になれない人。

「晩年の父」(小堀杏奴)

於菟をのぞくと、森家4兄姉弟の中で、もっともおもしろくなさそうな人。
小堀杏奴。(※於菟をのぞかなければ、於菟が一番おもしろくなさそうな人かもしれない)
でも多分、一番頼りになる人だとは思うけど。
苦労人だしね。父は死に、姉はあんなで、弟はあんなで、母に頼りにされては、ねー。
気の毒だけど、書いたものも今一つ、魅力に乏しい。
普通の人はツライ。

▼こんな鴎外はどうですか?

「伯林 一八八八年 講談社文庫」
(海渡英祐/講談社)

乱歩賞受賞の推理小説。
留学生・森林太郎が殺人事件を解決!?

関連して?→こんなホームズは?

▼やっぱり友達になれない人。

「朽葉色のショール 講談社文芸文庫」
(小堀杏奴/講談社)

於菟をのぞくと、森家4兄姉弟の中で、もっともおもしろくなさそうな人。
小堀杏奴。(※於菟をのぞかなければ、於菟が一番おもしろくなさそうな人かもしれない)

前から随筆に出会う度にそう思ってたけど、やっぱりそう。
私も歳をとったからどうだろうと思って読んだけど、やっぱりそう。
おもしろくなーい。むー。
家族や文学や人生のことを「鍛えられた見事な文章で綴るエッセイ三十九篇(あらすじより引用)」だそうです。見事な文章であることと、面白味があることはまったく別物であるとしみじみ感じます。
面白味を求めず、森家にまつわるエピソードをただ読む分には良いでしょう。

茉莉さんが語るエピソードはあんなに面白く、興味深く、陰影があるのにな〜。
ただ、「一度で好いから、本の無い家で、さっぱりと暮したいよ」と、母が言ったというエピソードは心に残りました。何だか、一人の愛書家として申し訳ない気持ちに。