迷子になったらまずHOMEへ

■クジラつながり
なんでみんなクジラが好きなんでしょうね?
猫と同じく、絵になる造形ですので、カバー絵にも注目したいです。

▼日本満載。

スターシップと俳句─ハヤカワ文庫SF─」
(ソムトウ・スチャリトクル 冬川亘訳/早川書房)

宇宙船と俳句? そしてクジラ?
めちゃくちゃ気になりますよね。
著者はアメリカの、タイ国籍を持つ、東洋人作家だそうです。

「全世界に壊滅的な破壊をもたらした<千年期大戦>の勃発から21年後のことであった。この巨大な異種属は、暗号言語学者にでも動物学者にでもなく、ひとりのうら若い少女、大臣である父の命を受け日本からハワイへと向かっていたイシダ・リョーコに語りかけてきたのだった。(あらすじより引用)」

はい、そうです。クジラがイシダ・リョーコに語りかけてきたんです!
クジラが人類に与えた驚くべきメッセージとは?
因みに巻頭に掲げられているのは上島鬼貫の花見の俳句。
鬼貫、知らなかった…。ごめんなさい。
日本風物いっぱいの異色SF。
→変な日本ランキング
→桜つながり(作成中)

▼どうして好きなんだろう。

「銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ」
大原まり子/早川書房)

自分がどこかおかしいのではないかと思うことってありませんか? 
なぜこの話にこんなに感動するのか、と。
考えてもあまり論理的な答えは出なくて、
余計に問題の根の深さを感じることもしばしばです。
さて、人にとっての感動のツボはじつにさまざまですが、
音楽、クジラ、少年少女…、リリカルな題材を、
リリカルなSFを書かせたら当代随一の著者が
使い込まれた包丁をよーく研いで料理。
この本はかなり最大公約数的ツボだと思うんですが、いかがでしょうか?
SF嫌いにもおすすめしたい短篇集。
→関連して→音楽と小説の関係ランキング

▼取り戻せない過去。

「パワナ PAWANA くじらの失楽園」
(ル・クレジオ/集英社)

(異論のある方も、もの知らずのたわ言と聞き流していただきたいのですが)
私は、なぜクジラを捕っちゃイカンのか?と思ってるクチです。
ひとんちの文化にケチをつけるな、と。
日本での捕鯨のイメージと言えば、
勇壮な漁師、命のやり取り、豊穣の海の恵み…
という感じですし、歴史も理由もロマンもある。(と思います。)
しかし、この作品を読むと、なるほどなと
反対派の気持ちもわかります。
巨大で、知恵があって、原始的な思いをゆさぶる生き物で
卵を産むのでなく、子供を産みます。
妊娠中のクジラが子供を産みにやってくる潟。
これはそんな海の秘境を舞台にした短編です。本当に短い物語ですが、
心に残ります。題材はクジラですが、テーマ自体は
クジラに限らず、人が生まれついて持っている<愛>もカバーしているのでしょう。
(きっと)

表紙見返しが当然のように、濃いブルーの美しい本です。
印字もブルーだったら、よかったのに…なんて。

▼ペンギンも。

「月に歌うクジラ」
(ダイアン・アッカーマン 葉月陽子訳/筑摩書房)
※難アリ、注意!

著者は詩人なんですって。
それでかー。と納得。
月に歌うクジラ。他に、3つの動物を取り上げていますが、
いずれも詩的です。「魅惑のコウモリ」「ワニは踊り、夢を見て」
「宇宙にいちばん近いペンギン」。
筆致にも、作中の彼女のものの感じ方にも
何やらただごとではない、繊細さがあるなぁと思ったんですよ。
それでか!

愉快というのではありませんが、読んで楽しい本です。
小難しいこともなく、書き足りないこともなく、
魅力的な書き手と共に清々しい気持ちで動物たちの姿を
目のあたりにできるノン・フィクション。良書です。
個人的にはペンギンの章が気に入りました。

▼よきかな。

「ジョナサンと宇宙クジラ ハヤカワ文庫SF」
(ロバート・F・ヤング/早川書房)

『たんぽぽ娘』で有名なロバート・F・ヤングの短篇集です。
抒情派ですなぁ。
しみじみしちゃいます。
SF嫌いでも大丈夫。
難しい理論はなし。SFの形を借りたリリカルな物語です。

表題作「ジョナサンと宇宙クジラ」、これね、教科書に載せたい!と
私は思いました。豊かなイメージに誘われる思索。ピッタリだと思う。
決して教訓的なばかりじゃなくて面白いし。
惑星をも飲み込む巨大な<宇宙クジラ>。
飲み込まれてしまったジョナサンがそこに見た物は?
人類は今こそ、これを読んで考えなくちゃなんないハズ。

収録作「サンタ条項」はクリスマス向き、皮肉でコミカルな小品です。
→クリスマスつながり

▼児童書にも。

「くじらをすきになった潜水艦」
(M・アルジッリ 安藤美紀夫訳 太田大八絵/大日本図書)

児童書です。
ピッコリーノは小さな潜水艦。
自分が戦争のために造られたことを悲しんでいます。
ある日、ピッコリーノはくじらに出会うのでした。
短いお話です。カバーや見返しの絵がかわいい。

表題作の他、「チン、チン、チンのルイゼッタ」「小さな自動車のゆめ」
「魔法つかいと仙女と機械」を収録。

▼見て楽しい。

「Flippers(フリッパーズ)クジラ+イルカ/パーフェクトガイド」
(中村庸夫:写真/光琳社出版)

同出版社から同タイトルの別版が出ているようなので、注意です。
ISBNを御確認ください。本書はISBN:4771302243。
出版社定価¥3360

クジラの事典、図鑑という感じです(イルカについてはちょっぴり)。クジラの生態、種類、図版たっぷり。本好きとしては、クジラの出てくる小説の章に興味津々。
ちゃんと、前述の『銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ』(大原まり子)も入っています。

その他、クジラについてのあれこれ。好きな方はかなりじーっと見ちゃうはず。

他に…「白鯨─新潮文庫─」(メルヴィル/新潮社)