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■イケてる註釈ランキング
註釈が面白い本。註釈が長い本。註釈がないと始まらない本。

▼たまに笑える。

「DUCK SOAP 家鴨石鹸あるいはセリフを覚えたあと役者は何をするかという問いをめぐる土曜日の黄昏と夜と夜中」
(北村想/北宋社)

戯曲
下段に(北村想とは別人と言い張る)在間ジロの丁寧な註釈(解説)付き。とかく難解に陥りやすい戯曲というものを補い、これがないと面白さ半減っていうくらい有意義な解説。大体真面目なんだけど、時にどう見てもあんまり要らない註もあって笑えます。んー、例えば、「マクドナルド 北村想の好物のハンバーガー。…」とかね。
→ドラマな題ランキング

▼立派な捕註。

「エリック・サティ」
(ジャン・コクトー 坂口安吾・佐藤朔訳/深夜叢書社)

サティとコクトーはともかく、プラス坂口安吾って取り合わせにちょっとびっくり。これって有名な取り合わせなんでしょうか? うーん、有名みたいだなぁ。(すみません。もの知らずで。)「自らを異端の作曲家サティに擬し、落伍者(ラテ)をもって任じた道化と破壊の無頼派坂口安吾…」とな。左様であったか。ごめんよ。
坂口安吾は訳してるだけでなく、詳細な捕註を付しています。下手をすると捕註のほうが長いくらい。

▼驚異の註釈。

「中二階」
(ニコルソン・ベイカー/白水社)

訳者あとがきでウマイことを言ってます。雄大な山脈の写真と、一輪の花のアップの写真と、どちらを壁に掛けようかと迷っていたら、いきなりつきつけられた電子顕微鏡でとらえた鮮明な原子の写真が、この作品だって。いわゆる
極小(ナノ)文学であると。
なっがーいなっがーーい註が付いてます。本文と同じテンションの註付きナノ小説。のんびり読みたい本。

■おまけ 註釈だけの話(!)。

「主な登場人物」
(清水義範/実業之日本社)

メルマガ読者の方へ 売り切れました!ありがとうございました!
うれしいです!

表題作の他14のパロディを収録する短篇集。
中の1篇「註釈物語」がアホらしくてイイです。なにしろ、
註釈だけですすむ話ですから。えー、どういうことかと言うと、ある本の註釈集だけが手に入ったけど、本体はナイというわけ。あのー、読んで、怒ってはいけませんよ。寛大な心の方に(笑)。
(でもね、ちょっとだけクラフト・エヴィング商会の「らくだこぶ書房21世紀古書目録」を思い出しましたよ。)

この本には他に、
登場人物紹介からあらすじを想像する話も収録されています(「主な登場人物」)。著者清水義範がハードボイルドの巨匠チャンドラーの「さらば愛しき女よ」(レイモンド・チャンドラー/)の登場人物紹介のみを見て、犯人を当てようとする実験的パロディ小説(?)。清水義範はがんばって結論を出すんですけど、それが当たってるかどうかは2冊を読んだ人のみのお楽しみってことで。 関連→ふざけてないのに笑っちゃう題ランキング

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■見過ごせない本ランキング
見過ごせない本は、大まかに言って2種類ありますよね。内容が見過ごせない本と外見が見過ごせない本。なるべく、そのどちらも見過ごせない本のランキングを試みました。いかが?

▼ただのファンです。

「らくだこぶ書房21世紀古書目録」
(クラフト・エヴィング商会/筑摩書房)

或る日、届いた古書目録。それは、未来から届いた古書目録なの!つまり、わたしたちにとっては未来の本なのに、すでに古本。不思議な本がいっぱいです。例えば、『世界なんて、まだ終わらないというのに』という本は
「印刷されてから半年後から一年後に初めて文字が浮き上がるという特殊インクで印刷された本」。細かい時間差で印刷されているので、読者は毎日チェックして物語の現れるのを待たなければならない、とか。『A』という本は、「答えだけが載っている本」。どこかに『Q』もあるとかないとか。あぁ、1冊でいいから欲しいなぁ。
さて、みなさん。クラフト・エヴィング商会の本は、まだ新刊本屋さんでも入手可能ですので今のうちに買っておきませんか?(また商売抜き)。もちろん当店でお買い求めいただければよりお安いですが(笑)、売り切れ御免ですので。
→関連項目
→註釈だけが載ってる本、っていうのが、あったっけ?

▼文字が色つき。

「アーモンドの樹」
(ウォルター・デ・ラ・メア)

文字が色つきの本。それだけで心のチェックリストに入ります。だって、なんかイイじゃないですか。この「アーモンドの樹」は、文字が茶色です。挿絵入り。しかも、詩人にして童話作家のデ・ラ・メアの童話は陰影があり、非常に美しい。子ども心って明るいばかりではないんですよね。でもそこにある哀感は大人のものとは違って、子どものものなんです。童話と言いますが、大人のための小説です。大切にしたいお話であり、秘蔵したい本。
→詩人の書いた小説つながり
→文字が色つきつながり

▼自慢したい本

「中井英夫作品集」

中井英夫/三一書房)

表紙(写真左)が全巻色違いの花模様。函(写真右)だって色違い。涙が出るほど美しい全集。
私の命日には墓前に供えてほしいです。
他に森茉莉全集も自慢したい美しさですね。

▼素通りできないささやかさ。

「ぜんまい屋の葉書」
(金田理恵/筑摩書房)

行き過ぎようとしても気になる本。著者が自分で作った葉書の数々を紹介してる絵葉書集ですが、じつに魅力的。こんな葉書ほしいなぁと思います。ささやかなアイディアなんだけど、心和む。英国製の活版印刷機で作ってるんですって。だからこその味わいなのね。

これは持ってた方がいい本なのかも?と本好きをかるーく誘惑する本です。こういう本が版を重ねていると、ほっとしますね。
→手紙つながり

さて、たちまちスペースもいっぱいになりましたが、この他にも、備品の付いているものや豆本は、それだけで見過ごせないのです。ジャンル的には、やはり本に関する本と、ミニチュアに関する本が見過ごせません。病気ですから。

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■名台詞ランキング ヒロイン編その1
本で出会った名台詞をあつめました。いっぱいあったので、「その1」といたしました。
名台詞、ヒロインに多いのはなぜ?

▼「すばらしい頭脳と美貌と、純情を兼ね備えたこの『あたし』を得たんですもの」

「アンの愛情 新潮文庫」
モンゴメリ 村岡花子訳/新潮文庫)

アンの友人フィルは大金持ちですごい美人。アレクとアロンゾの二人、どちらかと結婚しようかと悩んでいるのだけど、彼女が本当に恋に落ちたのは、貧乏な牧師さんのジョナスでした。かなーり個性的なフィルと結婚することになったジョナスに、みんなが同情するのに対して、「ジョナスは羨ましがられていいはずだ」と反論して言ったフィルの言葉が上記。実にいいですよね。時々、使います(?)。因みに角川文庫の中村佐喜子訳では
「美貌と才智と、その上このあたしの胸の中の黄金をつかんだんだもの」となっています。さらに因みに、店主のうろ覚え訳では「美貌と才智を兼ね備えたこの私の胸の純情を手に入れたんですもの」かな。このほうがよくない?

▼「この男に使ったお金があれば、南フランスに中くらいの大きさの結構な別荘が買えるのよ!」

「ブルースを、ワイルドに 文春文庫」
(エリカ・ジョング 柳瀬尚紀訳/文藝春秋)

ヒロインのリーラは成功した画家。お金もある。美男の愛人(ヒモ)もいる。ほんとにダメ男のヒモは、ある日、ケンカして出て行っちゃうんだけど、レストランで鉢合わせ。ヒモは女連れ。そこで、ヒロインが新しい女に対して
「この人とやっていかれるんでしょうね。ずいぶんお金がかかるのよと言うの。続けて上記の台詞。ダメな男と分かっていても止められない。まぁ人生ではままあることで。「前のめりで死にたい」を座右の銘としているわたくしとしては、このヒロインの威勢の良さは好ましいです。柳瀬尚紀の訳も◎。

▼「冷蔵庫…かき氷…北極…白くま…アイスノン…ペンギン…シャーベット…クールミントガム…シベリア…(冷静になるためのおまじない)

「3月革命(「甲子園の空に笑え」収録作・花とゆめコミックス)」
川原泉/白泉社)

少女マンガ。短篇。
仁礼家の姉弟はご近所でも天使のようだと評判で。弟は確かに天使、でも姉は…。猫をかぶりつづける姉の早紀子ちゃんが人前でヒステリーを耐えるために唱えたおまじないが上記。この漫画はすべての台詞が名台詞。マジで暗誦できそう。いや、できるね。世に隠れない古典的名作。
私はいつも冷静になるためのおまじないを唱えてるし、
いつかは
『そして熱海に行くのよ、あたしたち』って言いたいのよ。
→完璧な短篇ランキング
→姉弟つながり

▼「カルト美人」

「ひと呼んでミツコ」
姫野カオルコ /講談社)

昔気質の一少女・ミツコにはじつは隠された超能力があります。ミツコは人一倍我慢強く、堪えがたきを堪え、忍びがたきを忍ぶんだけども、世間のあまりの非道に遭遇してその我慢が限界に達すると、超能力炸裂。大暴れ。不逞の輩に天誅を下す。このカタストロフィがたまらん。
お役所仕事に泣かされた(激怒した)ことのある人には特におすすめの連作短篇集。
さて、そんなミツコの造語が
「カルト美人」。ミツコ曰く「わたしはどうせブスだから」と口にするのはよくない。(そこんところの説明も笑えます。)だから、ミツコはマニア受け美人。カルト美人。そう思って自分を励まし努力するのだそうだ。
→天誅つながり
→楽しすぎる連作短篇つながり
→超能力つながり

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