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誰にも言えない。
『きみの血を ハヤカワ文庫NV』(シオドア・スタージョン 山本光伸訳/早川書房)

帯で菊地秀行さんは「正統の(吸血鬼の)百倍怖い」と言うてますが、まったく怖くありません。なんで怖いのかなぁ。
だってさ、この小説ってさ、──と、すごく言いたいのに、言えないのがミソなんです。特に核心部分となると、相当忌憚なく語り合える友人相手でもちょっと躊躇うし、ディープな恋人相手でも(笑)、躊躇うでしょうね。
著者はSFで有名なスタージョン。本書の分類は吸血鬼系モダンホラーであることが多い。私には吸血鬼風味の叙述ミステリの印象が強かったな、と思ったら、みなさんそうおっしゃってますな。うん、そうなの。
米軍駐屯地で、ある兵士の書いた手紙の文面の異常さが問題になり、兵士は尋問されます。それが発端。
 ・ その手紙の内容はたった3行で一番最後に明らかにされる。
 ・ 兵士が三人称で綴る告白は、伏線いっぱいの優れた叙述ミステリだ。(どこかオカシイのです)
 ・ 核心の詳細は、明言されない。(想像しよう)
そう言われて、そそられた方、オススメです。

多少のことは平気な大人向け!

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※流通中。現在定価¥609

死んでもいい。
『100万回生きたねこ』(佐野洋子/講談社)

佐野洋子さんは、この作品を書いた後の人生は寝て暮らしてもいいと思います。こんな傑作を書いてしまったら、後の人生はオマケです。いつ死んでもいい(と言ったら感じ悪いですか。すみません)。
古くからの大ベストセラー絵本で、本屋さんには常備されています。私は見かける度に、立ち読みして、涙ぐみます。怖いもの見たさ(?)と申しましょうか、まだ泣けるかなぁと、確認の意味で手に取ってみて、毎度泣けるわけです。アイタタタタと、胸を押さえながら、心地よいダメージを受けて、絵本コーナーを後にするのです。
一家に一冊。愛を知る絵本です。

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※流通中です。現在定価¥1470

英断。
『サラ・ミッダのガーデンスケッチ』(サラ・ミッダ 橋本槙矩訳/サンリオ)

心和ませる自然を描いて人気のサラ・ミッダのイラスト集。詩画集と申し上げてよろしいでしょうか。じーっと注視したくなる微細で繊細な絵、そこに組み合わされた描き文字は英語ですが、あえて【訳は別冊】にしたところが編集者の英断だと思います。雰囲気をこわしません。
「楽園はガーデン」「家庭菜園」「果樹園のたのしみ」「ハーブガーデン」の4章

英語がホニャララな私はもちろん別冊テキストで解読。詩のような文もあり、田園エッセイもあり、ガーデニング解説、農耕解説もあり。ニヤリとさせるおかしみもあります。じつにカワイイ本でございます。
ファンはもちろん、私みたいなガーデンとかフラワーとかカントリーとかに関心のない向きにも心のオアシスとして、飽きずに眺められる本としてオススメできます。

スペースの都合上見にくいですが、左は本体(本文)、右が別冊のテキスト訳。

好きです、先生。
『谷川俊太郎の33の質問 正・続合わせて ちくま文庫』(谷川俊太郎/筑摩書房)

谷川俊太郎さんの作った33の質問に、各界の才人たちが答えます。谷川さんとの対談形式。
まず、そのメンバーがすごい。しかも、その33の質問もじつに気になる内容。質問&答えの魅力でぐいぐい引っ張られます。
回答者:武満徹、粟津潔、吉増剛造、岸田今日子、林光、大岡信、和田誠、谷川俊太郎(以上、正編)。手塚真、野田秀樹、伊藤比呂美、高橋源一郎、川崎徹、鈴木ユリイカ、高橋悠治(以上、続編)
質問22:あなたが一番犯しやすそうな罪は? 質問30:何のために、あるいは誰のためになら死ねますか? とかね。

また、もう一つの注目ポイントは谷川さんとの対談形式で答えられていること。聞き手が谷川さん。これが素晴らしい。答えからさらに答えを引き出す技量も勿論ですが、アホな意見を一つ述べさせてもらうなら、「ステキなんです」。私も質問されたい!と、目がハートになるステキさ。「それは、質問20の場合と同じなの?」と、私も物柔らかに聞かれたい(笑)。「先生好き」の心に訴える、知性と穏やかさを感じます。以前から佐野洋子さんのエッセイに出てくる夫・谷川さんを見かけるたび、「ステキッ」と思っておりましたが、もう確信に至りました。好きです。

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こんなんもあり。
『すてきなドールハウスブック』(村上一昭/じゃこめてい出版)

ドールハウスというのは、決して現実を写し取る精緻さだけが大切なのではありません。それを実感する1冊。
アイディアや、想像の余地が楽しい。肩の力の抜けた愛らしさとセンスの良さが際立っています。
「パリで見た花屋さん」「わが家の愛犬ペペの家」「摩天楼の見えるカウンターバー」「コレクション・ボックス」「プレゼント・ボックス」。ちょっとドールハウスをかじったことのある人なら、そこに盛り込まれたアイディアにハッとさせられるはずです。けして大掛かりではなく、簡素なアイディアなのがいいんです。
そして、本好きの中でも単なる紙好き(笑)としては、ドールハウスとしては異色の「ペーパークラフトのダイニングルーム」やベニヤ板のお人形が、絵本のようなムードを醸し出している「サーカス1・2」も見逃せないと思います。「オートバイガレージ」なんかは、
男性のドールハウスに特有の味わいを感じました。
趣味の人のみならず、門外漢も楽しめると思います。特に紙モノやおもちゃに反応してしまう方にはオススメ。村上さん、絵本を出すとイイと思います。いかがでしょう?(すでに出してたらごめんなさい)
※新刊でも流通中。ずいぶんなロングセラーですね。

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老若男女、必読。
『チョコレート工場の秘密 てのり文庫』(ロアルド・ダール 田村隆一訳/評論社)

じつは今まで未読でした。
未読の方、いらっしゃいますか? いらっしゃったら、ぜひ。すぐにでも。バレンタインも近いですし、チョコな気分で!
とにかく前半が素晴らしい。後半は納得の展開ですが、私の感動は前半に集中していました。
ウィリー・ワンカさんの秘密のチョコ工場に、たった5人だけが招待されると言うんです。食べ切れないほどのお菓子のお土産付きで! 招待券はワンカ社特製チョコバーの中。おぉ! しかし、主人公のチャーリー少年の家は貧しく、チョコも1年に1枚しか買えません。さて。。。。
※柳瀬尚紀訳は流通中ですが、田村隆一訳にこだわるかたに
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『三月は深き紅の淵を』恩田陸/講談社)

因みに、この本(→)の巻頭に、『チョコレート工場の秘密』の中の、当選者を工場に招待するという新聞広告の箇所が掲げられています。それにそそられて『チョコレート工場』を読んだのがワタクシです。

他にも、『チョコレート工場の秘密』の中には『上と外』という言葉が出て来ます。ハッ、これは! 恩田陸の作品に『上と外』というのがありますよね。恩田陸さん、今頃ハッとしたり、後先逆になったりしていてスマンです。

『三月は深き〜』自体ももちろん面白いですよ。
「その本はたった一人にだけ、たった一晩だけしか他人に貸してはなりません。かつて一度でも、むさぼるように本を読む幸せを味わったことのある人に(帯より)」
そんな稀覯本『三月は深き紅の淵を』をめぐる物語。
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生粋のコレクターに。
『海外SFショート・ショート秀作選1・2セット 集英社文庫コバルトシリーズ』(アイザック・アシモフ編 風見潤、佐柳ゆかり、勢田夏子訳/集英社)

初めて見たなぁ〜。しかも2冊揃いです。
ウチのミニ特集vol.2でも紹介しておりますが、さりげなくSFも入ってるコバルト文庫。中でもかなりレア気味な2冊になります。ウフ。
1巻に17編、2巻に18編収録。アシモフさん編。
テーマは、1が地球侵略、マッド・サイエンティスト、考える機械、終末のあと。
2が、未来のテレビ、奇怪な発明、ミュータント、時を超えた旅。
アシモフさんがアンソロジストとしての優れた手腕を発揮して、よくまとまってそそる内容です。
しかし、これは誰におすすめかと言いますと、やっぱりコレクターの方にオススメなんですの。作品のできばえ如何よりも、稀少性や存在の面白味に価値ある2冊です。『持って満足』という本。すみからすみまで持っていたいSFコレクターや、コバルトのSFと聞いて黙ってられないクチには堪えられません。
ま、もちろん読んでも面白いですけどね。

→ミニ特集・コバルト文庫

びっくりするくらい。
『北風のわすれたハンカチ 旺文社ジュニア図書館』(安房直子 牧村慶子:絵/旺文社)

なんの気なしに開いて感激しました。絵がいっぱい。児童書だから当たり前と思われた方、いや予想以上ですって。普通ここまで挿し絵の数が多いってことはないです。しかもほぼカラー。1、2ページおき、くらいの割合でカラー挿絵があります。下みたいな感じ↓。
しかも、ひそかにファンの多い牧村慶子さんのやさしい絵ですから、安房直子ファンにも牧村慶子ファンにもオススメです。
収録作は「北風のわすれたハンカチ」、「小さいやさしい右手」「赤いばらの橋」の3作。
最近刊行されている安房直子全集にも収録されていますし、文庫でも読んだ記憶がありますが、ダブって持っても惜しくない本です。

お話もいいんですよねぇ。ちょっとさみしい思いをしてるクマや、まものや小鬼の物語。号泣ではなく、ホロリ。ホッコリ。しみじみと、ささやかに、いつまでも忘れられないお話です。

※先頃、他社から復刊されました。それは流通中です。うちの在庫は旧版(旺文社版)です。

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わくわく感。
『くらのかみ ミステリーランド』(小野不由美/講談社)

講談社のミステリーランドシリーズ。当代随一、綺羅星のような豪華執筆陣に児童向けミステリを書かせて、大人も楽しんじゃおう、という趣向だと理解しております。
この作品もとにかくそそる。──「四人ゲーム」。まっくらな部屋の四隅に四人の人間が立ち、肩を順番に叩きながら部屋をぐるぐる回るゲームだ。とうぜん四人では成立しないはずのゲームを始めたところ、忽然と五人目が出現した
でもみんな最初からいたとしか思えない顔ぶればかり。古い屋敷に、後継者選びのため親族一同が呼び集められたのだが、さまざまな怪異が続出。謎を解くべく、少年探偵団が結成された。もちろんメンバーの中には座敷童子も紛れこんでいる……。(あらすじより適当に引用)」
以下、ネタバレないように書いてみますが、神経質な方は御注意。
非常に論理的な推理です。そこで異常な掟のある家が舞台。となれば、その異常な掟を著者が設定した理由と、座敷童子を出した理由を考えれば、謎は解けてしまいます。大人向け推理としては小品といった趣。私は、「座敷童子が現れたトリック」に期待してしまったんですが、そこに期待しちゃダメです。でもね、そんなことはどうでもいいの。
「小野不由美なら読みたいんじゃ!」「親子でミステリを楽しみたい」「子供をミステリファンにしたい」「座敷童子、そそるぅ」という方には、ハッキリおすすめできます。怪談、怪異、さりげないミスリード、破綻のないプロット、すべてがガッツリ揃っていますから。少年少女のがんばる話の清しいノスタルジー、少年探偵団の雰囲気でゴハン3杯はいける本好き、
小野不由美・児童向けミステリ・座敷童子・煽情的あらすじ、そう聞いて居ても立ってもいられない本好き、そんなこんなのワクワク感を裏切らないのです。※流通中。定価¥2100

→座敷わらしと言えば→ミニ特集・多すぎる?

んふふ。
『マザー・グース』(寺山修司訳 アーサー・ラッカム絵/新書館)

寺山修司とマザーグースだけでも充分オッケー!なのに、さらにアーサー・ラッカムがプラス!イェー!

ワタクシ、ちょっと英語がホニャララなので(笑)、あまり分からないのですが、相当かっ飛ばした寺山訳でぶっちぎっているそうですよ? へぇ〜。
カラー画12枚。全ページ、モノクロの線描画アリ。ハードカバー。全175ページ。じっくり読んで眺めて、満足のいく1冊です。3者のどのファンの方もそれぞれ楽しめ、もしも2者に関心があれば幸せ、3者に関心があれば至福かと思われます。

マザーグースの在庫も増えてきました。ミニ特集しようかな?

→してみました→ミニ特集vol.52マザー・グース

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