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ひとつの奇跡。
『女と女の世の中 ハヤカワ文庫JA』
(鈴木いづみ/早川書房)

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ありがとうございました。
売り切れました。

鈴木いづみさん。私が知ったのは最近です。再評価著しい昨今ですが、生前からずーっとずーっと、話題の人物なんですね。亡くなって早17年ですか。
ひとことで言えば、やはり素晴らしいです。これは出版社と初出誌から察するに一応SF短編集なんでしょうが、無理に分類はしなくてもいいでしょう。
鈴木いづみの小説というジャンルなんじゃないでしょうか。
60〜70年代、あの独特な、キュートでポップでキッチュでドギツイ、あの香りは今でも私たちを虜にすることがありますよね、それも不意に。まさに虚を突かれます。あの感じと著者の個性が融合して、誰にも真似のできない仕上がりです。にもかかわらず、今読んでも古めかしくない。見たことがない。これからもないだろう。後にも先にもない。もう永遠にどこにもない世界がこの本の中にだけあるんですわ。一瞬の奇跡的な作品!、だと思います、うん。
私的には魂を抜かれました
クスッとしたり、感じ入ったり、びっくりしたり、考え込んだりできる、いろんな魅力のある作品集です。
「魔女見習い」「朝日のようにさわやかに」「離婚裁判」「あまいお話」「悪魔になれない」「わるい夢」「静かな生活」「悲しきカンガルー」「女と女の世の中」の9編を収録。

え、これは何?
『迷宮1000 創元推理文庫』
(ヤン・ヴァイス 深見弾訳/東京創元社)

物語冒頭は映画的なシチュエーションです。私が先日見たB級映画『バイオハザード』、感心した映画『メメント』、いつまでも印象的な『キューブ』。
<記憶喪失>、もしくは、<なぜ自分がソコにいるのか不明であるという異常な状況下からの出発>、が3つの映画の共通項でしょう。これも、その一味です。
しかも舞台が普通の現代社会ではなく、SFチックな要素を持つとなると、ワケのわからなさも超A級。
そもそもの始めから、読者はもやもや感とワクワク感でいっぱいいっぱいです。あっぷあっぷ。それが延々と続きます。何なの?え、何なのっ?ここは笑うとこなの?って。面食らって、あらすじを読んでも、よく分かりません(笑)。あ、あらすじね、ちょっと引用しましょうか。
「天をついて聳えたつ館。果てしなく続く、見も知らぬ1000のフロア…。館の中、おれは記憶を失った状態で目覚めた。わずかな手がかりから得られたのは、どうやらおれが探偵であること。捜し求めるのは失踪したタマーラ姫の姿。打ち倒すべきは館の主、神とも悪魔とも噂される全能の男オヒスファー・ミューラー。この館がいざなうのは、はたして星の世界か、あるいは地獄か? 迷宮さながらの世界を駆けめぐる、あなたの探索行が幕を上げる。(適当に引用)」
…。ね? おかしいですって、これ。
いろいろな事象から自分のやるべきことのヒントを得て進む…という構造があからさまでして、ゲームの手触りに似ています。ともかくこれは、<スゴイ>話です。
※注・訳者あとがきは先に読んではいけません!

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今日(4/1)だけ一押し?
『エープリル・フール物語』
(倉田保雄/文藝春秋)

エイプリル・フールにまつわるアレコレを収めた本ですので、それはもうバカ話満載です。その由来から、各国の傑作ウソ話まで。またエープリル・フールには関係ないけど、ウソには関係ある笑い話、小話も多数。もちろん艶笑譚もアリ。エープリル・フールがいまいち満喫できないマジメな日本人たるワタクシたちも、お色気絡みなら結構イケますよね。なんなんでしょうね(笑)。
サッチャーさんの裸(?)写真やだんだん脱いで行く女の広告。ウフフです。
私は、ある貴族のやった<ハゲ文字>って言うのが気に入りました。とあるオペラハウスで、招待客が着席した後、2階から1階を眺めると、そこには…。ウフフ。
まったく知らなかったフランス語のエッチ系(?)言葉遊び「コントルペトリ」なんていうのも教えていただいて、ちょっとオトクな1冊です。
あ、<注文したけど、ウソ〜>っていうのは豪気な感じですが勘弁してください。私、泣きます。

→関連して・ウソほんとつながり

コバルト文庫の川端康成。
『万葉姉妹─集英社文庫コバルトシリーズ─』
(川端康成 久保恵子カバー絵 ※挿絵もアリ/集英社)

「ひまわり」に連載された川端康成の長編少女小説。もう一つの川端康成ですね。薄幸のヒロイン夏実に令嬢典子はなぜか冷たい。でも典子は実の姉なのかも…?
「いいお話があるの。いらっしゃいね。待っていることよ」、みなさまそのようにお話しになります。地の文章もデスマス調です。
カバー絵もナーイスッ。ステキーッ。挿絵も5p入っておりまして、それがまた、
いかにも少女チックで、たまらんのです。<なんちゃってひまわり風>とでも申しましょうか? 他の作品集等で読まれた方も、今一度、コバルトの、この装幀でいかがでしょうか?
コバルト文庫には、他にも意外な著者の意外な著作がありますので、お見逃しなく。
因みにこのシリーズゆえに解説はまじめで、わかりやすいのも特徴です。一見とっぴに思えた『万葉姉妹』も、川端康成の生い立ちを反映していると言われて唸りました。だからコバルトって好きなんです。

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黙って読む。うん。
『オットーと魔術師 SFファンタジー─集英社文庫コバルトシリーズ─』
(山尾悠子/集英社)

山尾悠子さんのコバルト作品です。さーさー、読みましょうよぅ。ねー。あ、シーッですよ、シーッ。静かに静かにね。
じつは以前からウチに1冊はあったのですが、店主の秘蔵本でした。(ほんとにすみません…。)今回、入荷して、めでたくダブリになりました。イェーイ。
収録作品は、「オットーと魔術師」「チョコレート人形」「堕天使」「初夏ものがたり」。珠玉の短篇集。この中で「山尾悠子作品集成」に収録されているのは、「堕天使」のみ。つまり、これはファン必携の書なんですね。
いつも一言一句どころか、世界観の隅々までゆるがせにしな作風の山尾悠子さんですが、ここではやはりなんとなく軽やかです。でも、ちゃんと山尾悠子味。だからコバルトって好きなんです。

→魔術師つながり
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名台詞の宝庫。
『海星・河童─少年小説─』
(唐十郎/大和書房)

うまいですよねー。
「やるねぇ」って思います。ため息まじりに。
とにかくいつものことですが、名台詞の展覧会のような作品集でして、いちいち心に残ります。特に意識して会話を多用したらしい表題作なんて、ちょっと話のスジを追う邪魔になるほど台詞がいい。
「僕だって君のように小さかった頃には、耳鳴りを河と名付けたり、(…中略…)しかし、もうこんな年になって月末の給料日を指折り数えるようになっちまってからは、ジンジン河に遊んだり、夏休みの日記帳に、桜貝をはさんだりすることなんてなくなってしまったよ」、なんてね。
妄想と幻想とエロスとノスタルジーとが渾然一体になっていて、悪い夢でも見たような妙な気分になります。満腹感と飢餓感がいっしょくたとでも言いましょうか。うーん、他人の夢の中でごちそうを食べた朝?
短編5つと
澁澤龍彦との往復書簡「過去へのゴンドラ」を所収。著者近影が若々しい、やや男前でたまげました。

脱帽。
『ブルーライトヨコハマ 徳間文庫』(3 amigos family studio/徳間書店)

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売り切れました。ありがとうございました。
その後→

どんな内容の小説なのかなぁ?と思いつつ手に取れば、横浜のガイドブック。なーんだ。つまんないの〜。と思ったんです、一瞬。が、いや、ちょっと待ったらんかい!と。(下品。)よく見ると、なんか違う。ひとあじ違う。いや三味くらい違うと思う。これはすごい。
例えば、横浜こども科学館の紹介写真は、日付入りの普通の子どもの記念写真だし、横浜スタジアムでは、暗い内側(入場口みたいなところ)から明るい球場を遠景で撮ってるし! つまりちっこい写真の一つ一つに遊び心があり、疎かにされていません。昭和30年代末頃の写真を映画風に綴ってみたり、映画館をその外観とおばちゃんの写真で紹介してみたり。
ポンチョ(?)でギター(?)片手の男が女を探しているというスジがあるらしく、全編、彼がさりげなく登場し、ホールを集めたページでは彼が舞台に上がっています。…ほんとに飽きない! 目からウロコの横浜案内。
「元々、ハードカバーで出たものなら、ハードカバー版でほしい」とまで入れ込みましたが、「徳間文庫オリジナルです」って書いてありました。ふーん。残念。
イエローページならぬブルーページ付き。

追記:姉妹編の東京案内『ラブミー東京』もあり。どちらも、昔、うちのメルマガで力一杯御紹介しました。

ねー、ちょっと見てー。
『ねんど工作のほん』
(こじまじろう/金園社)

なんでもない児童向け工作の本です。でも昭和60年発行ということもあって、写真や挿絵のチープ感がなんとも言えないなつかしい感じです。(注、誉めてます。)
手に取った時から、放せなくなって、じーっと見ちゃう。今から粘土を買って来ようかと思うくらいの妙な愛らしさに満ちています。アイディアいっぱい。
確かにかわいいんですけど、プフっと笑えます。(著者はもちろん大真面目。)表紙の画像にも見えるかと思いますが、顔や手などの部分だけ作って、あとはタオルをまとわせる猫、鳥のデコイ。他にも、うねってるネッシーの水上に出てる部分だけを何個かパーツで作って並べるとか(わかります?)。額縁やレリーフ。にわとり型の酒瓶のフタもかなりラブリー。人に見せたくなる本です。

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むやみに欲しい。
『大島弓子の世界 テレビランド増刊イラストアルバム7』
(大島弓子/徳間書店)

文字通り大島弓子さんの世界を楽しめます。雑誌形態なのですが、ページをめくればカラーの詩画集のような趣があります。
全82頁の半分はカラーの詩画集、半分は大島弓子の絵付きエッセイと他のマンガ家さんたちとの交流という感じでしょうか。
付録としてポスターが付いています。4ページしかないですが、綴じ込みの「弓子の小さな絵本 チルドレン」もアリ。ファンはなんとなくニヤける1冊。

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このキュートさ。
『CMくらぶ 和田誠イラストレーション集』
(和田誠/岩崎美術社)

和田誠さんのCM関連のイラスト集。かわいいです。
なんなんでしょうね。彼の本はみんなそうですが、ずーっと見ていたいです。疲れたら見たいと申しましょうか。
1972年の資生堂石鹸のシールなんて頬ずりしたい愛らしさ。ピースの宣伝もいいなぁ。こうやって見ていると、時は過ぎ、時代は変わったけど、和田さんは永遠に不滅です!などと言いたくなりますね。ノベルティ好き、企業もの好き、のワタクシとしては、「えー、こんなデザインのノベルティあったの?ほしー」と、かなり見過ごせないコレクターの気持ちでいっぱいになる本でもあります。(ノベルティのデザインしか分からないです。ブツは不明。それも気になる。)
あまりにもかわいくて、ちょっとぬり絵にしたくなりました。(ごめんなさい。) 

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その町へ行くには。
『風町通信』
(竹下文子作、飯野和好絵/偕成社)

風町にまつわるお話がいっぱい。短編童話集、と言っていいでしょうか。もちろん大人も楽しめます。いや、大人のほうが楽しいかな。
しみじみ思ったんですが、ここには、私が思わず、「このつながり、作らなくちゃ!」と思うような楽しいエッセンスがいっぱいあります。つまりですね、トランプ、時計、アイスクリーム、郵便局、タクシー、窓、月、灯台…。いいですなぁ。私も風町へ行くぅ。風町に住んで、風町通信を書くぅ〜(笑)。まぁ風町通信は書かないまでも、言ってみればそんな人生を夢想して、古本屋さんになったはずなのに、人生はきびしいです(笑)。
ちょっとため息の出るような、心和むお話。ただいま私の心が荒んでいるらしく、童話強化月間です。
1990年に改訂新版が出たようですが、当店在庫は'86の初版。こっちの方がいいと思います(極私的見解)。 
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