■今日の一押し P3


▼アベックのじゃまをしてはいけない。

ヨーロッパぶらりぶらり 『ヨーロッパぶらりぶらり ちくま文庫』(山下清/筑摩書房)

裸の大将のドラマ、見ていなかったんですが、最後に彼の貼り絵作品のカットが入るじゃないですか。あそこではやっぱり目を奪われたもんです。 みんな最後にアノ山下清だ!って分かって、腰を抜かすんですよね?いわゆる水戸黄門的展開?─って、見てないと言う割には記憶鮮明なんですけど(笑)。なんでだろ? ♪野に咲く花のように~、~そんな風にぼくたちも生きていけたらすばらしい~♪ 主題歌も歌えるし。 以前、ダウンタウンの番組で吉行和子さんが、山下清さんとテレビ番組の司会をした思い出を話していました。何年もいっしょに司会をした番組の最終回で、吉行さんの名前を聞かれて、「お、お、おまえは沖縄の女だな」っておっしゃたとか。松ちゃん、爆笑してましたよ。「すごいボケだ」って。 さてこの本、山下清のヨーロッパ紀行です。もう大好きです。持ち歩きたいです。読むと一瞬にしてほのぼの~って、なれますよ。清さん、アベックを書こうとするけど、腕の組み方がよくわからないから、式場隆三郎先生にアベックに近付いてもいいかとお伺いを立てるの。すると、ダメだって言われるんです。
清;ふたりだけで話すのはどんな話かな?/先生;ぼくのことがすきかとか結婚してくれますかとか、 とにかくおれと清が話すのとはだいぶちがうだろうな。
─先生もいい人です。赤瀬川原平の解説も的を得ていて、大変納得しました。


▼くらくら。

エッシャーが僕らの夢だった 『エッシャーが僕らの夢だった』(野地秩嘉/新潮社)

「M・C・エッシャーの版画…、えーっと」と、悩みましたが、見たらすぐに分かりました。美術の教科書に載ってましたもんね。 水が滝となって流れ落ちている絵なんだけど、よく見ると、それがまた水路を昇り、再度落ちているという…ありえない絵。だまし絵です。 あのエッシャーは、世界中でたくさんの著名人に愛されたのですが、最大のコレクションはじつは日本にある、と。ほぉー。7億の借金をしてコレクションを買った男、「少年マガジン」の表紙にエッシャーの絵を載せた天才編集者、美術展を開いた画商。3人の男たちの姿を追うノンフィクション感動物語。しかし、少年マガジンの表紙とはね! 天才が天才を知る、 運命の瞬間がいっぱい詰まってる物語 でして、なんだかこっちまで巻き込まれてしまう。読後には自分も参加したような気になってポーッとしちゃう、ぐっとくる本です。エッシャーの作品そのものの魅力を生かした装丁もイイ!


▼一家に一冊。

家族になったスズメのチュン 『家族になったスズメのチュン』※児童向(竹田津実/偕成社)

スズメは飼ってはいけません。でも、窓を開けておいても出ていかないのだから、仕方がないじゃないですか。 獣医の竹田津先生の元に運び込まれたスズメのヒナのチュンは、大きくなっても、外に出て行きません。先生のところに完全に居付いてしまいました。というノン・フィクションです。もうね、筋金入りの鳥バカたる私にはたまらん本です。鳥好き必携。そうじゃない人も必携。チュンのかわいい写真満載。このかわいらしさは危険です。思わず目尻を下げて、バカ面になってしまいますもん。 小鳥を飼っている方は、飼鳥にプロポーズされたことが少なからずあるはずですが、チュンも先生の奥さんにプロポーズ。かわいい。奥さんとおしゃべりしてるチュン。キュー。胸キュン。私、悩殺されまくり。 我が家にも1冊常備されているのですが、家族にすすめると、みんな、「だって死んじゃうでしょ?」と言って敬遠するのは何故? 死なないよ、と請け合うとようやく読んでくれて、ハマるんですわ。
→鳥つながり(作成中)


▼飛び火した人は多いはず。

星界物語 『星界物語1~3』(山田章博/青心社)

小野不由美「十二国記」の挿絵に眩惑されて、山田章博の著作をあたってみた方は多いのでは?山田章博描く詩画クロニクル(は?)って感じかしら。美しいです。 星界物語1、2(ザイン篇)、3(魔宮篇)の3冊。きれいな本でして、こういうのを見ると、あぁいいなぁと思いますね。自分の思いどおりの世界を作り上げたい、そういう著者の心意気を感じます。奥付けには著者作のEX LIBRISが描いてあって、つくづく、絵心のある方は羨ましいと思わざるをえません。そんなところまで自分好みにできるなんて。(別紙に刷って、貼り込んであったら最高なんですが。) 3冊とも100ページ弱ですが、1ページのお話につき1ページの絵は立派。淡々とした幻想世界の物語。100年後くらいに書棚で出会った持ち主に愛でられる本でしょう。
→クロニクルつながり


▼奇人変人。

キルヒャーの世界図鑑 『キルヒャーの世界図鑑 よみがえる普遍の夢』(ジョスリン・ゴドウィン 川島昭夫訳 澁澤龍彦・中野美代子・荒俣宏解説/工作舎)

イエズス会士・アタナシウス・キルヒャーは、奇人であり、珍奇なものの収集家であり、「驚異博物館」の所有者であり、第一級の学者であった─とのことで、その変な人と彼の思想を紹介する第1部・2部、澁澤龍彦・中野美代子・荒俣宏の3人が、キルヒャーについての考察を寄せる第3部という構成の、豪華な本。 我が道を行き過ぎな人の華麗な妄想かと思えば、あのデカルトが彼と親交を結ぼうとしたという話もあり、存在自体が目にあやな人です。 的確な科学的推論と同じテンションで語られる奇怪な妄想(本人は大真面目です)。訳のわからん挿絵も満載、そりゃ何やら見過ごせない思いがするぞ、という方に。
→博物館つながり


▼多才なひと。

幻覚カプセル 『幻覚カプセル─絶望居士のためのコント』(いとうせいこう/スイッチ・コーポレイション書籍出版部)

知る人ぞ知る、いとうせいこうのコント集。私はちょっと、『大理石』(ヨシフ・ブロツキー 沼野充義訳/白水社)なんかを思い出しました。割りと硬派の戯曲の中で「エヘ」って笑っちゃう場面があるじゃないですか。あれに似た手触りもある、ものもあるかな 。 序文にも書かれている通り、毎回登場人物の一人が必ず絶望居士となっていますが、別に他の人が絶望居士でもおかしくないです。ドリフで言うなら(なんでやねん)、「志村が絶望居士役になってるみたいだけど、ほんとはみんな絶望居士じゃん?」て感じでしょうか。 私的にはイイ人になりたい悪魔の出てくる「魔がさして」と表題作「幻覚カプセル」が好きです。特に表題作、私の頭の中で上演してみましたら、大爆笑でしたよ。 全18編。ですが、順番に一気読みというのが著者の理想でしょう。劇場での上演のようにプログラムが組まれていますから。


▼おっ。

またたかない星 『またたかない星─集英社文庫コバルトシリーズ─』(小泉喜美子/集英社)

コバルト文庫はあなどれないですよね、ほんと。私の、「どうしても入手したい本のリスト」にもコバルトが4、5冊入ってますから。でも、先日でほぼ入手し終えました。フッ(単なる自慢)。しかし、まだ「できれば入手したい本のリスト」には、3冊くらい残っています(笑)。なんなんでしょうか? この物欲は。 さて、この「またたかない星(スター)」、ミステリー作家小泉喜美子のコバルト文庫作品ということで、注目度大。「青春本格ミステリー」って、副題も何やらそそりますな。表題作「またたかない星」は、山荘で「監禁されている」と少女に助けを求められたわたし。しかも、その少女はあの人気スターだと言うけれど、スターはちゃんとテレビに出てるよ?っていうお話。 全7編収録。
→ミニ特集・コバルト文庫
→星つながり


▼二度押ししたいミニ絵本。

香りのおもいで 『メルヘンの部屋7 香りのおもいで』(中井英夫/詩と文、建石修志/画、世界文化社)

ミニ特集でも紹介済みですが、もう一度くらい押しておいてもバチは当たらなかろうと思う、個人的超オススメ品です。うっとりしちゃいますね、私は。 この、『香りのおもいで』は中井英夫の全作品リストに入っているのですが、ファンでも持っていない方は多いはず。幻の書、というのは言いすぎですかね?「香水に寄せる11の脚韻詩の試み」を収録しています。(作品自体は作品集にも収録されています。)


『メルヘンの部屋16ことばたちのフーガ』(種村季弘/文、石阪春生/画、世界文化社)

不思議の国のアリスならぬ、ことばの国のアリスです。いや、ほんとに良いですよ。雰囲気があって。 種村季弘描く、アリスのことば遊びですもん。すてきッ。ぐっとくるミニ絵本です。秘蔵したい度極大。
→アリスつながり
→※御注文の前に→世界の詩とメルヘン


▼ブック・ガイドに目がなくて。

ブック・ガイド’89 『ブック・ガイド’89 美的現代へのライフマニュアル 別冊文藝』(河出書房新社)

ただのブック・ガイド、と言ってはいかーん。わたくし、ブック・ガイドを見ると買わねばならないような妙な使命感にかられて購入してしまうクチでしたが、さすがにこれではお財布にひびくと思い、いつからか、どうしても気になるもの以外は立ち読みで済ませることにしました(オイオイ)。
しかし、これは、なんだか気になるブック・ガイドです。【'89】とは言うものの、御想像通り、別に2002となっていても驚きませんね。関係ないですもん。みんな、美的ライフのための書物を語ってるだけですし。(このみんなってのがまた豪華メンバー。)他に作家たちへのアンケート「愛すべき1冊」も見逃せません。圧巻はブック・カタログ。きゃー、どれも読みたいぃと身を捩りたくなるような的確な寸評付きの書物がたーくさんたーくさん紹介されています。でへ(と気味悪く笑う)。


▼三十一文字で人生相談。

言うてすまんが 『言うてすまんが 猫持のトホホ相談』(寒川猫持/新潮社)

大阪の方はたのしおますなぁ、とワケの分からんウソ関西弁で言いたくなります。 朝日新聞(大阪本社版)に連載されていた、寒川先生の身の上相談。回答は短歌で返されます。 例えば帯ね。
そらあんた 黙っとったら あきまへん 言わなわからん ダメでもともと」。初めて読んだ時、短歌とは気付きませんで、えろう失礼しました。 ウン! 大変気に入りましたよ。いろいろ大変だけど、やっぱり美しいわ、人生は!と、元気の出てくる人生相談集。三十一文字の中にちゃんと人生の真実があるところがすてき。 一家に一冊。何かの機会に悩めるあなたを元気にしてくれるはず。悩んでないあなたも、読んで楽しい、稀有なホンワカパッパな人生相談集です。おすすめ。


▼こういう企画 その3。

マイアミ沖殺人事件 『マイアミ沖殺人事件』(デニス・ホイートリー/中央公論社)

捜査ファイル・スタイルの推理小説。つまり、メモやマッチの燃えさし、毛髪、供述書など、事件の資料が備品として付いており、読者は実際にそれらを見ながら、推理するんです。もちろん、さわれます。作り物と分かってはいても、「カーテンの血痕」はキモチワルイ。解答は例によって袋綴じ。何もそこまでしなくても、っていう気もしますが、ミステリ好きの心をくすぐるのは確かです。よね?同シリーズに↓もあります。


『誰がロバート・プレンティスを殺したか』(デニス・ホイートリー/中央公論社)


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