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ファニエスト・ジャパニーズ、ではないけど。
「セケン・ムナサンヨー」
いとうせいこう/角川書店)

ごめんなさい、そしてありがとうございます。売り切れました!ウレシー!

えっと、よく聞いて下さい。これは、井原西鶴の「世間胸算用」を英訳したものを、さらに日本語に直訳(ここがミソ)したものです。
そういうことするのは、やっぱりこの人、
いとうせいこう

翻訳って何だろう? と思ったことはないですか? 原文は一つなのに、訳者によっていろんな訳文が生まれることの不思議。AをBと訳したのに、Bを訳すとAに戻らないことの不思議。その不思議を追求した本だと思いますね。いわゆる「外人の言う間違った日本」を楽しむ本
ではないんですよ。

英訳を日本語に戻した「セケン・ムナサンヨー」、そこにはまさにそこだけにしかない別世界、翻訳で生まれた「翻訳の世界」があるようです。

マメな人
「植草甚一主義」
(美術出版社)

いついつまでも変わらぬ人気者にして変なおじさん(注・誉めてますからね)、植草甚一さんのあれやこれやを集めた本。言ってみれば、「植草甚一展覧会図録」って感じかしら? それとも「まるごと植草甚一」かな? ムック形態ですが、大判の「図録」だから見ごたえがあって豪華。執筆陣も豪華ですよ。浅井慎平、加藤郁乎、高平哲郎、田村隆一、和田誠…。
植草甚一さんのコレクションもいろいろ載ってます。うーん。おもしろいや。でもやっぱり目を奪われたのはスクラップブックみたいな日記帳かな。スクラップ、してみたいけど、私にはまず絶対に無理。だって、まめまめしさと整理能力と、並々ならぬ熱意の結実した姿がスクラップブックでしょう? うーん、とても無理。
ファン必携の1冊。

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天使の会話
「The Angelic Conversation」
(インタビュー=デレク・ジャーマン他/質問舎)

むかし、レンタルビデオ店でめちゃくちゃマイナーそうなビデオを発見しました。題がいい。Angelic Conversationなんてね。帰宅して何気なく見ていると、ストーリーはナイも同然だけど、やけに印象的な凝った映像なわけです。アート・フィルムか、ふーんと思ってぼんやり見てて途中でびっくり。うおっ?!寝て見てたけど、思わず起き上がりましたよ。と、そこへお約束のように家族がやって来てですね、非常にうろたえたのを記憶しています。いや、別にアダルトとかではないんですよ。ご存じかと思いますが…。キスの一つもないけど、耽美すぎていやらしいという…。後で知ったんですが、その映画の監督デレク・ジャーマンは、知る人ぞ知る超映像美派(そんな言葉はないですが)の大家で同性愛者だったんです。さもありなん。
これは、その映画に関する監督へのインタビューやいろんな人のエッセイなどを収録した本です。内容から言っても、出版社から言っても稀少本。「あー、あの映画ね。覚えてるわ。美しかったわ、ちょっとどきどきしたわ」という方に、おすすめしたいです。
(注意・これは書籍です。)

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こういう企画 その2
「大原まり子・松浦理恵子の部屋(セリ・シャンブル6)」
(旺文社)

以前からこの二人が仲良しなのは有名だし、大原まり子さん自身、「松浦さんと以前対談した」と何かで書いていたので、気にしていた本です。
どちらかと言うと、松浦理恵子の方が過激な淑女といった感じで、大原まり子がひきずられてるような…。大原さんによる中島梓の噂話を受けて、
「そこがまずかったんじゃない、あの人の文章がダメなのは」って言っちゃうか、松浦理恵子よ。すごいな、おい。と、ワイドショー的関心。
▼大原まり子も参加してる「銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ」というレコードが出てるなんてついぞ知らなくて、俄然ほしくなりました。 
→関連書籍
▼大原まり子の「戦場のメリークリスマス」映画評アリ。 
→関連書籍(工事中)
※各種雑誌掲載記事の再録については
「大都会の満タンねこ」(いのまたむつみ・大原まり子/ビクター)と重なる部分もありますので注意です。

こういう企画。
「さまよえるオランダ人(ペーパーオペラ・シリーズ)」
(リヒャルト・ワーグナー 高辻知義訳 天野喜孝絵/新書館)

こういう企画、いいと思いませんか? こういう本を見かけると、シリーズで持ちたくなります。
一般的には、あまり知らないという人が多いオペラなるもの。でも、なんかかっこよさそう、という漠然とした憧れを抱いている人も多いはず。かくいう私もその一人。だーって、映画でも小説でも、オペラの上演中に事件が起こるじゃないですか!ねぇ?(俗物?) 実際、テレビでオペラの一場面を目撃すると、確かになんか高揚感があって、楽しそうなの。むやみに興奮しそう。そんで、ブーラヴォーとか言っちゃいそう(笑)。
この本は、ペーパー・オペラと謳ってる通り、有名オペラを本で楽しめるわけです。ふふん。絵がね、根強い人気の天野喜孝さんなんですよ。カラー口絵が12もあるっていうのは立派です。憧れだけど、とっつきにくいオペラに人気画家の絵をつけちゃおう。ちょっとバブリーな企画ものだけど、ツボです。

悪趣味か?
「幽霊城−ホーンテッド・キャッスル」
(サイモン・マースデン写真集/トレヴィル)

「ホーンテッド」って映画、ご覧になりましたか?映画はまぁまぁな出来でしたが、あの、こってこてのベッドヘッドの装飾がふぅーっと動くところ!、めっちゃくちゃ怖かったです。子供の頃から、夜眠れなくなる理由のベスト3に入るんですもん。棚の上の人形が動いた気がした、っていうのが。極力、人形と目を合わせないように努力した子供時代。なつかしくないなぁ。

で、幽霊城ですが、本当にあるんですな。くぅ、こわいよぅ。好き好んで、そんないわくありげなところばかりを撮ってまわってる、変人写真家サイモン・マースデンの写真集。
見れば見るほど、なんかありそうです。あのドラキュラの城もあれば、ジル・ド・レエのシャントセ城もある。彼の手にかかるとベルサイユ宮殿まで気味が悪いからすごいです。城という城がイヤになる本。でもつくづく見てみたい、変な本です。
これ、一押しなんだろうか?

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ふつうのジャン・ジュネ?
「パリの男たち」
(朝吹登水子/人文書院)

サガンの翻訳でも有名な朝吹さんがパリの面白い男たちについて語る。すべての話がいかにもパリらしく、気がきいてて、こじゃれてて、ツボ。フランス男って実際に会うとげんなりすることも多々あるんだけど、文字で読んでる限りはじつに愉快。コクトーから文房具店のおやじまで、いろいろな人が出てくる中、やっぱり特筆すべきはジャン・ジュネでしょうか。ジャン・ジュネが知人にいて、実際に会ったり話したりするって、すごくないですか? 一般人と同じテンションで語られるジャン・ジュネの逸話。こんなの初めて。彼にもそういう普通の生活があるとは存じませんでした、というかね、気付きませんでしたよ。

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はずせないところ
「らくだこぶ書房21世紀古書目録」
(クラフト・エヴィング商会)

本好きにはどうしても買いたくなる本というのがありますよね。「うぉっ、タケー。でも買わなくちゃなるめー」って、つい言葉遣いまで下品になっちゃうような本が世の中には確かにあります。こうなったらもう、出会ったことを不運とあきらめておとなしくレジに並ぶしかない。だって、後からほしくなるに決まってるから。そして後で探しても絶対に見つからないから。

そんなわけでクラフト・エヴィング商会の本はすべて黙って買うほかはありません。ほんとです。

「らくだこぶ書房21世紀古書目録」は、未来から届いた古書目録。つまり、わたしたちには未来の本なのに古本なの。不思議な本がいっぱいです。

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もう一度夏休みをください
「すいーん星旅行記」
(大島弓子/徳間書店)

夏休み、もう1回体験したいです。あの、お義理のように与えられる夏休みじゃないですよ。40日あまりのほんとの夏休みです。ラジオ体操でハンコをおしてもらう。お日様はカンカン照りで、蝉も鳴く。お祭りもある。宿題もある。昼寝する。おばあちゃんちに遊びに行く。スイカを食べる。
えーなー。遠足も昔はめんどくさかったものだけど、今じゃもう1回行きたいし、トシですか?

一人の少女の夏休み旅行記。大島弓子の描く絵本。

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こんな観光案内を作ってよ
「印象派旅人宣言」
(メトロポリタン出版部)

とにかく字があれば読むのが性癖だから、旅をすると決めれば、必ずガイドブックをくまなくチェックします。しますよね? ただ、あの手の雑誌はあんまり面白くない。写真が多いものより、字が多い雑誌を選ぶけど、まぁたいていはありきたりの見どころ食べどころの紹介でねー、なんかもっと、面白いネタはないんかー、と思わざるを得ません。

この本はね、楽しいですよ。「なにをしたいのか」という視点から旅をとらえたい、という主旨の通り、こういうことをするためにどこに行くかをテーマに著名人たちがそれぞれの思いを記します。
「仕事のことを忘れたい」という大真面目な北野大から、「幻を見たい」大森望まで。みなさんの願いがこもって奇妙な説得力のある1冊に仕上がっています。一応マップ付き。

伝説の本って、そこまでのことではないけど
「朝、起きて、君には言うことが何もないなら」
高橋源一郎/講談社)

'83から雑誌スタジオ・ボイスに連載されていたものを再構成して発行された本。

各界の女性たちの写真に高橋源一郎が文章をつけています。個人的に特筆すべきは、伊藤比呂美さんがかるーく脱いでること。彼女は、もちろんあれ(名前度忘れ、失礼)でも潔く脱いでましたが、やっぱり見入ってしまいます。うーむ、これが。って。他の方はそんなに脱いでません。戸川純、柴門ふみにも注目。

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